ガバメントクラウド運用管理補助者って何?【その2】

2024.08.30

その他

みなさんこんにちは!

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先日テレビのニュース番組だったか情報番組だったか定かではありませんが、そこでこんなことが言われてました。

 

「若者に野球の例え話は通じない」

 

私は幼いころ、外で遊ぶとなるともっぱら野球でした。

兄を相手に実家と隣家の間の私道をグラウンドにして、実家の接道の向いにある超豪邸(とんでもなく広大な庭に

池やバンカーもあるゴルフのコースがあり、家主である社長が猟銃で狩りをするときに連れていく猟犬が5、6匹

走り回っていて、城のように塀で囲まれた大邸宅)の塀をバックネットにさせてもらい、ピッチャーとバッター

だけで1対1対戦型野球をやっていました。ここに飛んだらヒット、ここに飛んだら2塁打、ここの塀を

超えたらホームランなどとローカルルールをつくって楽しんでました。

すると隣の家(男4人兄弟)からボクも入れてと1人、2人と加わり、わいわい騒ぐ声を聞きつけて

また別の家の子が入ってきます。なんなら隣の家のおじさんも機嫌がいい場合(前日のナイターで贔屓のチームが

勝利した翌日など)に入ってくることすらあります。そしてうっかりファールボールが塀を超えて超豪邸

庭に入ってしまうと大変です。今は絶滅危惧種となった、他人の子を容赦なく叱る怖~い大人、

社長夫人にお許しをいただかないといけなくなり、勇気がいりますが、インターフォン越しにこどもたち

みんなで声を合わせて「ボールとらせてください!」と許可をもらって入ります。

庭に入ると今度は当時の私と目線が同じぐらいのこれまた怖~い猟犬をかきわけ、ボールを探すという

怖い思いをしてやっとボールを見つけると、大体猟犬の餌食となって穴だらけになってたりします。

さて、そんな環境で育った私ではありますが、自分のこどもに野球の例え話をするかというと絶対しません。

野球に全く関心がなく、ルールも基本的な野球用語も知らないので全く理解されないからです。

近所のこどもを見てても、最近キャッチボールしている子なんて全く見なくなりました。

ただ、そんな今でも野球選手のこんな言葉には心打たれると思います。

2024年夏の甲子園開会式で宣誓をした選手が

「努力したとしても報われるとは限らない。しかし、努力しなければ報われることはない。」

というイチローの言葉に励まされたと言っていました。

トップレベルの勝負の世界では、どれだけ努力したとしても、必ず勝者になれる保証は得られないでしょう。

ただ、できる限りいい準備ができたとしたら、満足な準備をしないまま迎える本番よりは明るい未来が

訪れる可能性が高いことは間違いないでしょう。

そう信じつつ、我々はガバメントクラウドのプロジェクトを円滑に進めるために、

少しでもいい準備をしておきたいものです。きちんと準備しておけばきっと報われると思いますので。

それでは今回のテーマ「ガバメントクラウド運用管理補助者【その2】」の話を始めたいと思います。

ガバメントクラウドの契約関係

前回のブログ「ガバメントクラウド運用管理補助者って何?【その1】」で書いた通り、デジタル庁から出されている

「地方公共団体情報システムのガバメントクラウドの利用について【第2.0版】※」(以下「第2.0版」)は第2.0版

と記すことにします。第2.0版では「地⽅公共団体へのガバメントクラウド提供に関する契約関係」という図

にて契約関係が図示されているのですが、この図に若干手を加えたのが以下の図1)です。

※2024年7月に【第2.1版】が出され、4.1 システム管理上の責任分解【デジタル庁のよる個別領域への例外的なアクセス】として具体的な

記述が加えられましたが、今回のテーマに関する内容において大きな変更がなかったため、【第2.0版】をベースとした記述のままとしています。

詳細は「地方公共団体情報システムのガバメントクラウドの利用について【第2.1版】」をご参照ください。

 

図1)

 

赤枠で囲ったところだけ登場人物と契約を追加しています。各契約については以下の通りです。

(ア) ガバメントクラウド提供契約(デジタル庁・CSP 間)

各地方公共団体がそれぞれCSPと契約するのではなく、デジタル庁がまとめてCSPと特別契約を締結し、

地方公共団体へクラウドサービスを提供します。デジタル庁はCSPへの支払い義務とクラウドの運用管理義務を負います。 

CSPがマルチクラウドとなれば、この契約はその数だけ増えることになります。

 

(イ) ガバメントクラウド利⽤権付与・運⽤管理委託契約(デジタル庁・地⽅公共団体間)

デジタル庁は、(ア)の契約に基づき、地方公共団体へクラウドサービスを提供するため、各地方公共団体と

「ガバメントクラウド利⽤権付与・運⽤管理委託契約」を結びます。デジタル庁は各地方公共団体に対し、

ガバメントクラウド個別領域利⽤権限を付与するのですが、要するにAWSのアカウントを払い出すわけです。

このとき、単に事務的にアカウントを払い出すのではなく、地方公共団体が必要な機能とガードレールと呼ばれる

統制機能が設定された上で提供されます。

例えば、国内データ保管の観点から東京リージョン、大阪リージョン以外は制限されたり、所謂20業務システム

を稼働するAWSアカウントはインターネットゲートウェイへのアタッチが不可だったりといった制限がされて

いるなど、安全に利用できるよう統制が入っています。

一方地方公共団体は、デジタル庁に対し、クラウドサービスの利用料の支払い義務と運用管理義務を負います。 

 

(ウ) ガバメントクラウド運⽤管理補助委託契約(地⽅公共団体・ガバメントクラウド運⽤管理補助者間)

地⽅公共団体は、(イ)で与えられたガバメントクラウド個別領域利用権限について、その一部又は全部を

ガバメントクラウド運⽤管理補助者に委託することができます。

この契約により、ガバメントクラウド運⽤管理補助者は、ガバメントクラウド個別領域のクラウドサービス

の運⽤管理義務を負い、地⽅公共団体は、ガバメントクラウド運⽤管理補助者に対し、運⽤管理委託料

を⽀払います。

なお、1つの地方公共団体が複数のガバメントクラウド運⽤管理補助者に委託したり、統括的な運用管理

補助者を定めたりすることも可能です。

但し、ガバメントクラウド運⽤管理補助者のスコープが分かれ、その分登場人物が増えれば増えるほど

契約もコストもマネジメント工数も増えていくことになります。

 

(エ) アプリケーション等の提供・保守契約(地⽅公共団体・ASP 間)

地⽅公共団体は、標準準拠システム等のアプリケーションを利⽤するため、ASP と契約します。

ここは第2.0版をそのまま引用しますと、以下の通りです。

<以下【第2.0版】P.7 3.1.4ガバメントクラウド提供に関する契約関係、①ガバメントクラウド共同利用方式/単独利用方式に共通する契約関係より抜粋>

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

・ 地⽅公共団体は、ASP に対し、デジタル庁から利⽤権限を付与されるガバメントクラウド個別領域等において

 アプリケーション等を提供・保守することを承認する。

ASP は、地⽅公共団体に対し、ガバメントクラウド個別領域等において標準準拠システム等のアプリケーション等

 を提供し、保守を⾏う。

・ 地⽅公共団体は、ASP に対し、アプリケーション等利⽤料・保守料を⽀払う。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<ここまで抜粋>

この契約も当然ながら、ASPが複数になれば、そのASPの数だけ契約が必要となります。加えて、ASP

ガバメントクラウド運用管理補助者としての業務を兼務してくれる場合は問題ないですが、不可の場合は、

そのASPの提供するアプリケーションの運用管理を受託してくれるベンダーを見つけなければなりません。

業務アプリによって3社のASPベンダーのサービスを利用する場合、3社とも運用管理補助者兼務OKなら契約は

3つですが、逆に3社とも不可の場合、契約は6つになってしまう可能性があります。

 

(オ) 回線運⽤管理補助委託契約(地⽅公共団体・回線運⽤管理補助者間)および

(カ) 専⽤回線等の提供保守契約(地⽅公共団体・通信回線事業者間)

この2つについてはすでに前回のブログ「ガバメントクラウド運用管理補助者って何?【その1】」

「回線運用管理補助者と通信回線事業者」https://atbex.attokyo.co.jp/blog/detail/109/)で述べている通りですので省略します。

 

(キ)ネットワーク構築運用補助契約(地方公共団体・ベンダー)

これは第1.0版、第2.0版に載っていない登場人物です。ネットワークといっても回線管理運用補助者

地方公共団体~ガバメントクラウド間のネットワーク(旧ガバメントクラウド接続サービスと呼んでいた部分)

について運用管理をする事業者であるのに対し、ネットワーク構築運用補助者はガバメントクラウド上の

AWS Transit Gateway 等を用いた接続設定などを行う事業者で、ガバメントクラウド運用管理補助者

1つの形態です。なので、(イ)の契約のスコープにこの役割が含まれていない場合は、この(キ)の契約が

必要となり、含まれている場合は不要となります。

 

(ク)統括的運用管理補助契約(地方公共団体・任意のベンダー)

単独方式で複数のASPのサービスを利用する場合で、複数のガバメントクラウド運⽤管理補助者が受託

しており、かつ地方公共団体がそれら複数の環境に対して統制をとって管理したい場合に、統括的な運用管理

補助者に委託することが可能です。

さらに、この役割はガバメントクラウド全体のネットワークを管理するネットワーク構築運用補助者が兼務

することが想定されるため、その場合は(キ)でカバーされ、(ク)は不要となります。

 

(ケ)システムインテグレーション委託契約

地方公共団体から見ると、(イ)のデジタル庁との契約を除いてベンダーとの契約が(エ)(ウ)(オ)(カ)

(キ)(ク)と6つもあり、さらにASPがマルチベンダーの場合やASPと運用管理を兼務しない場合などにより、

登場人物がさらに増え、契約の数も膨らんでいきます。

もし、地場のSIerが必要な役割とベンダーを整理・調整し、契約を一本化し、地方公共団体は地場のSIerと

だけ契約すればよいかたちにできたら非常にすっきりします。プロジェクト全体統括的な仕事や各役割の隙間

を埋める調整などの面倒を見てくれる役回りをやってくれるとしたら、やはり地場のSIerさんしかいないので

はないか、いてくれたらとても心強いに違いない、ということで付け加えています。

ただし、これはここでしか出てきてない話なので、参考程度にとどめていただければと思います。

 

ガバメント運用管理補助者の委託先

ガバメントクラウドのプロジェクトにおいては、地方公共団体がガバメントクラウド運用管理補助者に委託する

場合、どこに頼んだらいいのか?どこまでやってくれるのか?といったところの確認、調整が必要となり、地方公共団体

にとっては少々面倒です。

20業務を複数のASPベンダーで運用することを想定した場合、登場人物が増えれば増えるほど、契約関係、委託範囲が

複雑になります。そうなれば必然的にベンダーマネジメントが難しくなり、工数も膨らみます。

まずどこに何を委託するのか、どこが何を受託してくれるのか、何はOKで、何がNGなのかの整理から始めないといけません。

地方公共団体がベンダーにガバメントクラウド運用管理補助者としての役割を委託するにあたって、以下のような

ステップを踏む必要があろうかと思われます。

1.現状のシステムの委託先との契約、役割の整理、確認をする

2.ガバメントクラウド移行後の委託先(ASP)との契約、役割の整理、確認をする

3.2を踏まえ、ガバメントクラウド運用管理補助者として委託したい内容を想定する

4.3の内容を受託可能な任意のベンダーを見つける

5.任意のベンダーから提案を受け、スコープ(委託範囲)や予算などの協議、調整をする

6.5の妥結、契約締結

1で現状の役割や契約を改めて確認した上で、2でそれがクラウド移行後はどうなるのか想定してみます。

仮にあるベンダーA社がオンプレミスのシステムをクラウドに移行してくれるとして、A社はASPとしてSaaS

で業務システムを提供してくれるだけなのか、それとも運用管理も対応してくれるのか、対応してくれるなら

どういう範囲、内容でやってくれるのか、といったところを明確にする必要があります。

2を踏まえ、3でガバメント運用管理補助者に委託したい内容を想定し、4で受託してくれるベンダーを見つけます。

そして5でスコープや予算を協議し、めでたく妥結すれば契約締結となります。

この中でも委託する側がちょっと困るのではないかと思われるのが4です。

ガバメントクラウド運用管理補助者という言葉、役割が検討されはじめたばかりで、まだそれほど浸透してい

ないですし、どのベンダーがどういう範囲をサービス提供するのかもあまり明確になっていません。地方公共団体

としても、一体どこに頼めばいいのかと委託先の選定に困ってしまうかもしれません。

もしも委託先でお困りの場合、お気軽にアット東京へご相談ください。

アット東京は多数のパートナー企業と協力関係にあるため、ガバメントクラウド運用管理補助者の調整についても

各社と協議、協力しています。アット東京自身は、ガバメントクラウド運用管理補助者がスコープ外であるものの、

ガバメントクラウド運用管理補助者として受託可能なベンダーの調整を行います。

アット東京を相談先の1つに加えていただければ幸いです。

 

まとめ

ガバメントクラウドの契約関係

ガバメントクラウドにおいて必要となるのは図1)の通り以下9つの契約

(ア)ガバメントクラウド提供契約(デジタル庁・CSP 間)

(イ)ガバメントクラウド利用権付与・運用管理委託契約(デジタル庁・地⽅公共団体間)

(ウ)ガバメントクラウド運用管理補助委託契約(地⽅公共団体・ガバメントクラウド運⽤管理補助者間) 

(エ)アプリケーション等の提供・保守契約(地⽅公共団体・ASP間)

(オ)回線運用管理補助委託契約(地⽅公共団体・回線運⽤管理補助者間)

(カ)専用回線等の提供保守契約(地⽅公共団体・通信回線事業者間)

(キ)ネットワーク構築運用補助委託契約(地方公共団体・任意のベンダー間)

(ク)統括運用管理補助委託契約(地方公共団体・任意のベンダー間)

(ケ)システムインテグレーション委託契約(地方公共団体・地場のSIer間)

 

ガバメントクラウド運用管理補助者の委託先

以下のステップで検討し、委託先に困った場合はアット東京へご相談いただければ、ガバメントクラウド運用

管理補助者を受託可能なパートナー企業のご紹介が可能。

1.現状のシステムの委託先との契約、役割の整理、確認をする

2.ガバメントクラウド移行後の委託先との契約、役割の整理、確認をする

3.2を踏まえガバメントクラウド運用管理補助者として委託したい内容を想定する

4.3の内容を受託してくれる任意のベンダーを見つける

5.任意のベンダーから提案を受け、スコープ(委託範囲)や予算などの協議、調整する

6.5の妥結、契約締結

 

 

いかがでしたか?

ガバメントクラウドに関連する業務に従事している方にとって、少しでもお役に立てたら

うれしいですが、今回はこれでゲームセットです。(うっかり野球用語が・・・)

それでは!

※このページに掲載されている内容、サービス/製品の価格、仕様、その他の情報は、掲載時点の情報です。その後予告なしに変更となる場合があります。

※文中では「地方公共団体情報システムのガバメントクラウドの利用に関する基準【第 1.0 版】 」と2024年4月に改定された「地方公共団体情報システム

のガバメントクラウドの利用について【第2.0版】」を引用しています。

この記事を書いた人 @Sherpa



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