ガバメントクラウドとは?メガクラウドの接続ポイントが設置されているデータセンター会社が解説します!

ガバメントクラウド構成イメージ

はじめに

こんにちは、チータです。今回はガバメントクラウドについて解説します。

政府が2025年度までに全ての地方公共団体のシステムを移行する方針を発表したガバメントクラウド。

その仕組みの概念や背景、接続イメージについて説明しますので、地方公共団体職員の方やSIerの方の参考になりましたら幸いです。

目次

ガバメントクラウドとは?

ガバメントクラウドとは、政府が調達・整備・運用管理する、政府機関と地方公共団体ための共通のクラウドサービス利用環境のことです。

「ガバメントクラウド」というクラウド自体が存在しているのではなく、政府の定めるさまざまな要件を満たしたクラウド事業者が提供しているクラウドサービスを政府が契約し、各地方公共団体に提供する形となっています。

2022年10月7日に地方公共団体の情報システムを標準化、共通化する方向を定めた「地方公共団体情報システム標準化基本方針」が発表され、「全国約1700の地方公共団体が2025年度末までにデジタル庁が整備するガバメントクラウドを活用した標準準拠システムに移行」するという基本方針が閣議決定されました。

ガバメントクラウドが推進され始めた背景 

ガバメントクラウドへの移行方針が発表された背景には、これまでの地方公共団体における課題があります。

  1. 行政サービスの多くを地方公共団体が提供しているが、それらを支える基幹業務システムは地方公共団体が個別に外注・開発しており、国中に似たようなシステムが乱立している
  2. 地方公共団体それぞれが独自に開発しているので、システムの維持管理や制度改正時の改修等において個別対応を余儀なくされ地方公共団体個々の負担が大きい
  3. 情報システムの差異の調整が負担となりクラウド利用が円滑に進まない

上記により、ガバメントクラウドに行政サービスを行うための標準的なシステムが実装され、地方公共団体がそれを駆使するようになれば、上記の課題が払拭されると期待されています。

デジタル庁は今後「国民が行政手続において情報通信技術の便益を享受できる環境を整備する」「情報通信技術の効果的な活用により持続可能な行政運営を確立する」ことを掲げており、その実現に近づくと思われます。

ガバメントクラウドの仕組み

■イメージ図

ガバメントクラウドの仕組み イメージ図

ガバメントクラウドの仕組みについて説明します。

  • まずデジタル庁がCSP(クラウドサービス事業者)と契約し、基盤となるクラウドを構築します。
  • 次に複数のASP(アプリケーションサービス事業者)がガバメントクラウド上に住基アプリケーションなどの「基幹業務実行のためのアプリケーション」を構築します。
  • 各地方公共団体はそれらの中から自分達にとって一番良いアプリケーションを選択し、利用することが可能です。

■システムの所有から利用へ

地方公共団体は、自身でシステムを所有する方法だけではなく、ガバメントクラウド上のアプリケーションを「利用」することも可能になります。

そうすることで従来のように基幹業務システムのためのサーバー等のハードウェアやOS・ミドルウェア・アプリケーション等のソフトウェアを保持したり、整備したりする必要がなくなり負担が軽減されます。

ガバメントクラウドのメリット

ガバメントクラウドに業務システムが移行することで、地方公共団体にとっても私たち国民にとってもメリットがあると考えられます。

地方公共団体にとってのメリット

・サーバー等を管理する必要がなくなる

前の項目でも書きましたが、従来のように地方公共団体は基幹業務システムを所有する必要がなくなり、それまで庁舎内で保持していたサーバー等の機器を管理・整備する必要がなくなります。

・ベンダーロックインが回避できる

ベンダーロックインとは、オンプレミス環境でのシステム構築の場合、システムが最初にそのシステムを構築した特定ベンダーに過度に依存した状態になることです。

この場合、システムの追加や変更を行いたいときに、コストや工数の観点から他ベンダーに移行することが困難になります。

また、長期間運用で契約する場合、システムが古くなってセキュリティの脆弱性への対応が難しくなる状況となることもあります。

ガバメントクラウド上で機能要件やデータ要件・連携要件が標準化されれば、それを踏まえて複数のベンダーがアプリケーションを開発して構築することができ、地方公共団体はその中から良いものを選択することができます。

アプリケーションの乗り換えもスムーズに行うことができるので、特定のベンダーに過度に依存することがなくなりベンダーロックインを回避できます。

・制度改正・法令改正時に地方公共団体が個別に改修対応する必要がなくなる

従来は、制度改正や突発的な行政需要へ緊急的に対応する際は、地方公共団体が個別にシステム改修に対応する必要がありました。

ガバメントクラウド上に構築される業務システムは標準化された状態で構築されるので、改修する必要が発生した場合には国がその対応を行い、改修が必要最小限の範囲で、かつ迅速に行われるようになります。

*標準的な業務システム(標準準拠システム)は原則としてカスタマイズしない方針となっており、地方公共団体が条例や予算にもとづいて行う独自施策実現のためのシステムは、標準準拠システムとは別のシステムとして構築することになります。

・各地方公共団体が個別にセキュリティ対策や運用監視を行う必要がなくなる

ガバメントクラウドがまとめてセキュリティ対策や運用監視を行います。

・データ連携が容易になる

データ要件が標準化されれば、各府省間での連携が容易になります。

国民にとってのメリット

ガバメントクラウドへの移行が進むことによって、以下のような未来が実現するかもしれません。

・オンライン化が進み実際に役所まで行く必要がなくなるかもしれない

行政システムがクラウド上に移行することによってオンライン化が進み、わざわざ市役所まで行かなくてもスマートフォンだけで申請手続きを済ませることができるようになる可能性があります。

・各種手続きが一括で行えるようになるかもしれない

データ連携が進むことで、関連する手続きがまとめて行えるようになり、時間がかからなくなるというメリットが考えられます。

ガバメントクラウド認定事業者

デジタル庁は、政府が定めるセキュリティ評価精度(ISMAP)を満たしたクラウドベンダーをガバメントクラウド認定事業者として契約を締結しています。

2023年8月現在、そのクラウドベンダーは4つで、AWS、Azure、Google Cloud、Oracle Cloudの4社です。

地方公共団体はこの4社の中から、どのベンダーを基盤としたガバメントクラウドにするか選択することが可能です。

ガバメントクラウド先行事業に採択された神戸市は、AWSを選択して基幹業務システムの移行を進めています。

参考URL:https://aws.amazon.com/jp/government-education/worldwide/japan/LG-Industry-Site/

ガバメントクラウド接続サービスとは?

ガバメントクラウド接続サービスイメージ図

ガバメントクラウドへの接続では3つの拠点が存在しています。ネットワークの終端装置が設置される「国および地方公共団体ネットワーク拠点(基準書の中では「庁内ネットワーク拠点」と表現されています)」、ガバメントクラウドへの接続口が設置されている「ガバメントクラウド接続拠点(データセンター)」、そしてガバメントクラウドです。

国および地方公共団体ネットワーク拠点から直接ガバメントクラウドに接続するのではなく、ガバメントクラウド接続拠点を介してガバメントクラウドに接続することになります。

そのために、国および地方公共団体ネットワーク拠点とガバメントクラウド接続拠点を結ぶ「拠点接続サービス」と、ガバメントクラウド接続拠点とガバメントクラウドとを結ぶ「クラウド接続サービス」の2つの回線を用意する必要があります。

この2つの回線のことを合わせてデジタル庁は「ガバメントクラウド接続サービス」と呼んでいます。

ガバメントクラウドを構成するにあたって、「ガバメントクラウド接続サービス」と契約し、ガバメントクラウドまでの接続回線を調達する必要があります。

ガバメントクラウド接続サービスの要件

このガバメントクラウド接続サービスには細かな要件が定められています。特に大事なのは「海外を経由しない日本国内に閉じたネットワークサービス」であり、かつ「インターネット回線を経由しない閉域ネットワークサービス」である必要があるということです。

また、ある程度の帯域を確保した上で、冗長構成にすることが求められています。

以下、主な要件の抜粋です。

  • 要件1.ガバメントクラウドへの接続は東日本エリア及び西日本エリアからの独立したクラウド接続サービスを有すること。(被災時に自動で切り替わる冗長化設計を可能とする)
  • 要件2.SLA としてネットワーク稼働率 99.99% 以上とすること。
  • 要件3.サービスインターフェースとして、ブラウザから利用できる日本語のポータルから以下の操作を可能とすること。①アクセス回線の帯域変更申込②回線利用状況の確認・アクセス回線状況の診断③情報参照④連絡先の変更等

以上、主な要件の抜粋でした。これらの要件を満たした接続サービスを選ぶ必要があります。

詳細は「地方公共団体情報システムのガバメントクラウドの利用に関する基準」をご確認ください。

URL:https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/c58162cb-92e5-4a43-9ad5-095b7c45100c/3013abc6/20221007_policies_local_governments_outline_04.pdf

各地方公共団体からのガバメントクラウドへの接続イメージ

ガバメントクラウドへの接続方法は大きくわけて2つあります。1つは「直接接続方式」、もう1つは「ハイブリッド方式」です。それぞれ解説していきます。

直接接続方式

■直接接続方式イメージ図

地方公共団体からのガバメントクラウド接続イメージ

地方公共団体内の各市区町村から直接クラウド接続拠点へ閉域接続用の回線を準備し、そこからガバメントクラウドに接続するやり方です。

クラウド接続拠点は東京・大阪にありますので、そこから近い地方公共団体はこの構成にすると接続にかかるコストを安価にガバメントクラウド接続が可能になります。

ただし、東京・大阪圏から遠い地方公共団体がこの構成にすると、非常にコストがかかることが想定されます。

例えば、地方公共団体の中に30市区町村あるとしたら、それら一つ一つの市区町村から東京や大阪のクラウド接続拠点へ閉域接続回線を構築する必要が生じます。

また、距離が遠くなればなるほど伝送遅延(レイテンシー)も高くなってしまい、低レイテンシーのデータレスポンスが要求されるシステムをガバメントクラウドに構築することで遅延などのデメリットが生じてしまうかもしれません。

そこで考えられるのがもう一つの「ハイブリッド方式」です。

ハイブリッド方式

■ハイブリッド方式イメージ図

ガバメントクラウド構成イメージ ハイブリッド方式

低レイテンシーのデータレスポンスが要求されるシステムや、セキュリティの問題でクラウドに移行できない個人情報データを扱うシステムはオンプレミスサーバーに残し、移行可能なシステムをガバメントクラウドに構築するのがこのハイブリッド構成です。

この構成にする場合、まず地方公共団体の近くにあるデータセンター(図の中の「各地域のデータセンター」)の中に各市区町村のデータが入ったオンプレミスサーバーを設置し、そのデータセンターへ各市区町村からの接続を集め、そこからクラウド接続拠点へ閉域接続し、クラウド接続拠点を経由してガバメントクラウドに接続するという流れとなります。

図の中に「X県」「Y県」と記載がありますが、このように各都道府県または市区町村ごとにイントラネットが構築されていることがあり、これを利用する形です。

このような構成にすることで地方公共団体内の市区町村の接続を各地域のデータセンターにまとめることができるので、クラウド接続拠点に対して必要な閉域接続回線は1本となり、接続コストを大幅に抑えることができます。

 いきなり全てを100%クラウド移行するのではなく、東京・大阪から遠く離れている地方公共団体においては、まずこのハイブリッド構成にして、段階的に移行していくことも合理的な選択肢です。

 弊社アット東京の接続サービス、「ATBeX」を利用すれば、直接接続方式、ハイブリッド構成のどちらの構成も構築することができます。

「ハイブリッド方式イメージ図」で記載しているように、東京と大阪それぞれのクラウド拠点に対して閉域接続し、東西にまたがったディザスターリカバリーな冗長構成にすることも可能です。

ガバメントクラウド移行に設けられた期限

デジタル庁は、全国にある約1700の市区町村の基幹20業務のシステムを2025年度末までにガバメントクラウド上の標準準拠システムに移行すると決定しています。もう2年半ほどしか時間が残されていません。

弊社アット東京では、ガバメントクラウド接続サービスの提供を行っておりますので、ガバメントクラウドへの移行を検討中で接続サービスについて情報を知りたいという方は是非お問い合わせください。

ATBeXのご紹介

ATBeX 拠点

最後に、前の章でも少しでてきた弊社の接続サービス、「ATBeX」を紹介させていただきます。

「ATBeX」はアット東京が提供している接続サービスです。

ATBeXを利用すればガバメントクラウドに認定されている4クラウド(AWS, Azure, Google Cloud, Oracle Cloud)の東日本・西日本の両リージョンに閉域接続することが可能です。

クラウド接続拠点からガバメントクラウドへ、東と西でそれぞれ独立させたディザスターリカバリーな冗長構成にできます。

また、ATBeXは各地域のデータセンターとも提携しており、「各地方公共団体からのガバメントクラウドへの接続イメージ」の章の「ハイブリッド構成」で述べた、各地域のデータセンター内に設置されているオンプレミスサーバーとメガクラウドとが共存するハイブリッド構成を構築することが可能です。

ガバメントクラウドへの接続でお悩みの方は、是非弊社までお問い合わせください。

■提携しているデータセンター一覧

https://atbex.attokyo.co.jp/locations/

上記のリンクに連携可能な各都道府県別のデータセンターが記載されていますので是非ご確認ください。

ガバメントクラウド接続に関して、そこに記載されている事業者さまにお問い合わせいただいても大丈夫です。

今回の記事は以上です。ガバメントクラウド構築においての一助となれば幸いです。ご精読ありがとうございました。

この記事を書いた人 チータ



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