2022.04.28
はじめに
パブリッククラウドへのシステム移行が活発になっている昨今において、クラウドとの接続方法についてはお客さまにとって重要な検討事項だと思います。接続方法の選択肢の中に専用線接続サービスも入ってくるかと思われますが、クラウドごとにそのサービス内容のディテールは微妙に違い、比較する際に苦労されるお客さまもいらっしゃることでしょう。
この記事では、各クラウドごとに専用線接続サービスの比較を行い、その違いをつまびらかにしていきますので、皆さまの比較検討にお役立ていただければ幸いです。
専用線接続サービス自体についてお知りになりたい方は、他の記事が詳しいのでそちらも合わせてご覧ください。
→【保存版】AWS Direct Connectとは?概要やVPNとの違い、接続タイプについて詳しく解説!
→Azure ExpressRouteとは?概要と接続方法などについてデータセンター会社が解説
→Google Cloud Interconnect とは?Google Cloudへの接続方法も含めて詳細に解説
→OCI FastConnectとは?特徴や料金も含めて解説
目次
-
- ■各クラウド専用線の名称
- ・接続タイプごとの名称の違い
- ・POPの名称と、ネットワーク接続機能(クラウド側のネットワーク機器)の名称
- ■各クラウド専用線のさまざまな比較一覧表
- ・各クラウド専用線が提供している接続帯域一覧表
- ・物理接続ポイントのあるデータセンター(POPの場所、ロケーション)一覧
- ・構築できる接続構成の違い
- ・料金体系の違い
- ・SLAの条件の違い
- ・クラウド専用線接続比較表まとめ
- ■各クラウドごとに推奨されている冗長構成
- ・AWS Direct ConnectのSLAを満たす冗長構成
- ・Azure ExpressRouteの冗長構成
- ・Google Cloud Interconnectの冗長構成
- ・OCI FastConnectの冗長構成
- ■各クラウド専用線のおおまかな特長
- ・AWS Direct Connectのおおまかな特長
- ・Azure ExpressRouteのおおまかな特長
- ・Google Cloud Interconnectのおおまかな特長
- ・Oracle Cloud Infrastructure FastConnectのおおまかな特長
- ■ご紹介したメガクラウドの専用線と接続できる「ATBeX」「プレミアムコネクト」
各クラウド専用線の名称
まずは名称などの基本的な項目から説明していきましょう。
クラウド | 運営会社 | 専用線名称 |
AWS | Amazon | AWS Direct Connect |
Azure | Microsoft | Azure ExpressRoute |
Goougle Cloud | Google Cloud Interconnect | |
Oracle Cloud | Oracle | OCI FastConnect |
接続タイプごとの名称の違い
専用線には、「物理接続タイプ」と「論理接続タイプ」の二つがありますが、クラウドによってその名称や説明の仕方が異なっておりややこしく感じられる方もいらっしゃるでしょう。この点についてそれぞれのクラウドごとに整理しました。
まずは、「物理接続タイプ」と「論理接続タイプ」がそれぞれどのような接続タイプなのかをみてみましょう。
物理接続タイプ
■イメージ図①
物理接続タイプとは、クラウドのPOPへ直接光ファイバーケーブルで物理的に接続する専用線接続のタイプです。
この接続タイプを利用する場合は、各クラウドのPOP(専用接続するためのクラウド側の設備のことです)が設置されているデータセンターにお客さまのオンプレミスサーバーのラックを置き、そのデータセンター内でデータセンター事業者が提供する構内配線のサービスを利用し、クラウドのPOPの物理イーサネットポートと光ファイバーケーブルで直接つなぎこみます。(イメージ図①)
■イメージ図②
この接続方法を使えば、専用接続のためにクラウド側が用意している物理イーサネットポートをお客さまの会社一社で占有して使うことができます。
専用線接続を一つの大きな土管に例えるとわかりやすく、その土管の中を他社と共有せずに、一社でまるまる使えるようなイメージです。(イメージ図②)
大容量の接続帯域を確保して専用線接続したいときにはこの物理接続タイプが向いており、クラウドによって選択できる接続帯域に違いはありますが、1Gbps~100Gbpsなどの大容量で接続することが可能です。
論理接続タイプ
■イメージ図③
論理接続タイプとは、クラウドから認定を受けて公式プロバイダーとなっている通信キャリアやデータセンター事業者経由で専用線に接続するタイプの接続サービスです。
この接続タイプを利用する場合は、公式プロバイダーに申し込み契約をおこない、プロバイダー経由でクラウド専用線と接続します。(イメージ図③)
■イメージ図④
これは、プロバイダーがクラウドと物理接続を行い、その線を論理的に分割して数社に提供するという仕組みになっています。
先ほどの土管に例えると、一本の土管を細い管に何本も分割して、その一つ一つをお客さまに提供するようなイメージです。(イメージ図④)
プロバイダーがまず大容量の専用線接続帯域を確保し、お客さま向けにさまざまな通信帯域の接続を提供するのですが、その帯域はプロバイダーによってまちまちです。
帯域幅は50Mbps~10Gbpsまで細かく用意されているので、小容量で専用線接続を利用したい場合はこちらの論理接続タイプが向いています。
各クラウドのそれぞれの名称は以下です。
クラウド | 物理接続タイプ名称 | 論理接続タイプ名称 |
AWS | AWS Direct Connect 専用接続 |
AWS Direct Connect ホスト型接続 ホスト型仮想インターフェイス (ホスト型 VIF) |
Azure | ExpressRoute Direct | ExpressRoute |
Google Cloud | Dedicated Interconnect | Partner Interconnect |
OCI | FastConnect(直接契約) | FastConnect(プロバイダー経由で契約) |
OCIでは双方の名称に違いがなく、「物理接続を自社で直接行うか、プロバイダーが行うか」という分け方になっています。どちらを利用するにしてもOCI FastConnect側のポート利用料金は変わりません。
POPの名称と、ネットワーク接続機能(クラウド側のネットワーク機器)の名称
そもそもPOPとは「Point Of Presence」の略で、簡単に言うと二つの異なるネットワーク間をつなぐための接続設備のことです。
POPにはルータやネットワークスイッチの機能が備わっており、専用接続の受け口としてデータセンター内に構築されます。
各クラウドのPOPもデータセンターに構築されているわけですが、このPOP自体の呼び方も各クラウドによってまちまちで混乱することもしばしば。
ネットワーク接続機能(クラウド側の接続端末)の名称もクラウドによって異なっているので、ここではその両方を整理してみました。
■イメージ図⑤
POP自体についてもう少し補足します。POPのとらえ方は少し難しいかもしれませんが、部屋のようなものとイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。
データセンターの中に、各クラウドの接続設備のある部屋やラックがあり、その中にクラウド側のルータやネットワークスイッチなどネットワーク機能を有するデバイス(Edge)が沢山集められているようなイメージで、その部屋自体が「POP」です。(イメージ図⑤)
クラウドの公式サイトでよく「ロケーション」という言葉が出てくるのですが、これは「POPの設置されているデータセンター」のことで、ロケーション名称はデータセンターの名称となっています。
その上で、POPの呼称とPOPの中のネットワーク機能(光ファイバーケーブルをつなぐ物理イーサネットポートを有するデバイスなど)の呼び方に少し差があるので整理しました。
クラウド専用線サービス | POPのあるデータセンターまたはPOP自体の呼称 | POPの中のネットワーク機能の名称 |
AWS Direct Connect | AWS Direct Connect ロケーション | AWS Direct Connect |
Azure ExpressRoute |
・ExpressRoute の場所 ・ピアリングの場所 ・meet-me-locations |
・Microsoft Edge ・Microsoft エンタープライズエッジ(MSEE) |
Google Cloud Interconnect |
・ロケーション ・相互接続ロケーション |
Google peering Edge |
OCI FastConnect | Datacenter Location | FastConnect Edge |
このように、微妙に呼び方が違っていたりするのですが、公式サイトの英語原文を確認するとどのクラウドでも「locations」「colocations」という表現なので、もしかしたら各サイトで日本語に翻訳するときにこのような微妙な表現の違いになったのかもしれません。「ロケーション」という言葉で認識しておけば理解する上では間違いないでしょう。
また、「POPの中のネットワーク機能」という表現も少しややこしいですが、これはPOPの中には複数のネットワークデバイスが存在していることから、このような表現にしています。光ファイバーケーブルをつなぐデバイスが複数、部屋の中に存在しており、クラウド側ではそれらをまとめて「Edge(エッジ)」と呼称しています。AWSでは、このネットワーク機能のことを「AWS Direct Connect」のサービス名称とアイコンで表現しています。
お客さまからすると、この「Edge」がクラウドへの専用線接続の入り口となります。
各クラウド専用線のさまざまな比較一覧表
各クラウド専用線が提供している接続帯域一覧表
各クラウド専用線が提供している接続帯域について一覧表にしましたので是非参考にしてください。
クラウド専用線 | 論理接続タイプ接続帯域 | 物理接続タイプ接続帯域 | |||||||||||
AWS Direct Connect |
50M |
100M | 200M | 300M | 400M | 500M | 1G | 2G | 5G | 10G | 1G | 10G | 100G |
Azure ExpressRoute | 50M | 100M | 200M | - | - | 500M | 1G | 2G | 5G | 10G | - | 10G | 100G |
Google Cloud Interconnect | 50M | 100M | 200M | 300M | 400M | 500M | 1G | 2G | 5G | 10G | - | 10G | 100G |
OCI FastConnect | 50M | 100M | 200M | 300M | 400M | 500M | 1G | 2G | 5G | 10G | 1G | 10G |
(100G) *日本では提供されていません |
*弊社ATBeXで提供している接続帯域です。他社プロバイダーでは異なります。 |
物理接続ポイントのあるデータセンター(POPの場所、ロケーション)一覧
物理接続タイプで専用線に接続するためには、それぞれのクラウドのPOPがあるデータセンターにお客さまのオンプレミスサーバーのラックを設置し、直接クラウドのPOPと接続する必要がありますが、クラウドごとにPOPのあるデータセンターの数や拠点は違います。こちらも一覧表にまとめましたのでご参考にしてください。
クラウド専用線 | 都市 |
データセンター (POPが構築されている場所) |
AWS Direct Connect | 東京 | アット東京 CC1 |
エクイニクス TY2 | ||
大阪 | エクイニクス OS1 | |
Azure ExpressRoute | 東京 | エクイニクス TY4 (東京) |
アット東京 (東京2) | ||
大阪 | エクイニクス OS1 | |
Google Cloud Interconnect | 東京 | アット東京 CC2 |
エクイニクス TY2 | ||
エクイニクス TY4 | ||
ComSpaceⅠ | ||
大阪 | NTT テレパーク堂島ビル2 | |
エクイニクス OS1 | ||
OCI FastConnect | 東京 | エクイニクス TY4 |
大阪 | NTTデータ 堂島4 |
Google Cloud InterconnectはPOPの場所の数が多く、構成を構築する上での選択肢が比較的多いことがわかります。
構築できる接続構成の違い
それぞれのクラウドの専用線では構築できる接続構成に微妙な違いがあります。
Azure ExpressRouteでは基本が冗長構成となっている、OCI FastConnectは東京にロケーションが一つ、など。ここでは、各クラウドの専用線がどういった接続構成に対応しているのか表にまとめました。
それぞれの構成の定義も下記に記載しますので、あわせて参考にしてください。
- シングル構成・・・一つの専用線での接続構成
- シングルロケーション冗長構成・・・一つのロケーション内で二つの専用線接続を用いる接続構成
- マルチPOP冗長構成・・・一つのリージョン内で、複数のロケーションを使用する冗長構成。片方のデータセンターに障害が起きたとしても可用性を維持できる。
- マルチリージョン冗長構成・・・二つのリージョンを利用した冗長構成。日本では東京と大阪で構築することになる。どちらかで大規模災害が起きたとしてもシステムの可用性を維持できる。
構成の内容 \ 専用線名 | AWS Direct Connect | Azure ExpressRoute | Google Cloud Interconnect | OCI FastConnect |
シングル構成 | 〇 | × | 〇 | 〇 |
シングルロケーション冗長構成 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
マルチPOP冗長構成 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
マルチリージョン冗長構成 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
料金体系の違い
各クラウドの専用線では料金体系にも違いがあります。複数の項目において料金がかかり、複雑な計算となる専用線サービスもあれば、一つの料金タイプの時間定額のみという非常にわかりやすい専用線もあります。ぜひ参考にしてください。
料金 \ 専用線名 | AWS Direct Connect | Azure ExpressRoute | Google Cloud Interconnect | OCI FastConnect | |
ポート料金 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
データ転送料金 | 専用線オンプレミス→クラウド(IN) | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
クラウド→オンプレミス(OUT) | 従量課金 | 従量課金または定額課金 | 従量課金 | 無料 |
各料金の説明は以下です。
- ポート料金・・・専用線を利用するためにつなぐ回線帯域の利用料金。どのクラウドも1時間単位で課金される。
- データ転送料金・・・クラウドとオンプレミス間のデータ転送にかかる料金。どのクラウドも、クラウド側が受信するデータ転送(IN)には料金はかからない。クラウドからオンプレミス側にデータ転送(OUT)するときに料金が発生。OCI FastConnectだけはこの料金が両方ともかからない。
SLAの条件の違い
それぞれのクラウドの専用線接続にはSLA(Service Level Agreement)が提示されており、細かな要件が定められています。
SLAの条件となる構成を満たせば品質が保証され、SLAの水準をクラウド側が満たすことができなかった際に返金保証などの対象となります。
クラウドによって条件となる構成に違いがありますので、一覧表にまとめてみました。次の章でそれぞれの構成を図解していますので、合わせてご覧ください。
■クラウド専用線SLAの可用性と条件となる構成
クラウド専用線 | 保障されるSLA | SLAの条件となる構成 | 図 |
AWS Direct Connect | 99.9% | 2つのDirect Connectロケーションで一つずつDirect Connectを構築 | A |
99.99% | 2つのDirect Connectロケーションそれぞれに2つのDirect Connectを構築 | B | |
Azure ExpressRoute | 99% or 99.95% | Azureからエンドユーザー設備間までを冗長構成で構築 | C |
Google Cloud Interconnect | 99.9% | 1つの大都市圏のエッジアベイラビリティドメインに対して2本以上のInterconnect回線が接続されており、そのそれぞれが別のエッジアベイラビリティドメインに接続する形で構築 | D |
99.99% |
・4つのInterconnect接続(1つの大都市圏(メトロ)に2つ、別の大都市圏に2つ)を利用し、同じ大都市圏内にあるInterconnect接続を、別のエッジアベイラビリティドメイン(メトロのアベイラビリティゾーン)に配置 ・2つ以上の異なるGoogle Cloudリージョンに少なくとも2つのCloud Routerを配置 |
E | |
OCI FastConnect | 99.9% | 各FastConnectロケーション内の複数のプロバイダーを利用する、もしくは各FastConnectロケーション内の複数の物理回線を利用する | F |
クラウド専用線接続比較表まとめ
これまでの比較表を一つの表に統合したものを掲載いたします、参考にしてください。
AWS Direct Connect | Azure ExpressRoute | Google Cloud Interconnect | OCI FastConnect | ||
国内ロケーション数 | 東京 | 2 | 2 | 4 | 1 |
大阪 | 1 | 1 | 2 | 1 | |
物理型接続通信帯域 | 1G, 10G, 100G | 10G, 100G | 10G, 100G | 1G, 10G | |
論理型接続通信帯域 |
50M, 100M, 200M, 300M, 400M, 500M, |
50M, 100M, 200M, 500M, 1G, 2G, 5G, 10G |
50M, 100M, 200M, 300M, 400M, 500M, 1G, 2G, 5G, 10G |
50M, 100M, 200M, 300M, 400M, 500M, 1G, 2G, 5G, 10G |
|
SLA | 99.9% or 99.99% | 99% or 99.95% | 99.9% or 99.99% | 99.9% | |
シングル接続 | 〇 | × | 〇 | 〇 | |
シングルロケーション冗長構成 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
マルチPOP冗長構成 | 〇 | 〇 | 〇 | × | |
マルチリージョン冗長構成 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
かかる料金 | ポート料金 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
データ転送(IN) | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | |
データ転送(OUT) | 従量課金 | 従量課金 or 定額課金 | 従量課金 | 無料 |
各クラウドごとに推奨されている冗長構成
AWS Direct ConnectのSLAを満たす冗長構成
SLA 99.9% の冗長構成
■イメージ図A
AWS Direct Connectの可用性99.9%保証のSLAを満たす冗長構成です。
二つのDirect Connectロケーションを利用し、それぞれで一つずつDirect Connectを構築し、AWSのリージョンと接続する必要があります。
東京で構築する場合は、アット東京のCC1とエクイニクスのTY2二つのデータセンターでDirect Connectとの接続を構築することになります。
SLA 99.99% の冗長構成
■イメージ図B
AWS Direct Connectの可用性99.99%保証のSLAを満たす冗長構成です。
二つのDirect Connectロケーションを利用し、そのそれぞれで二つずつDirect Connectを構築する必要があります。
より重要なシステムではこの構成を推奨しますとAWSの公式サイトでは記載されていますが、この構成にすると、それ相応のコストがかかりますので、十分に検討したほうがよいかと思います。
AWS Direct Connectの他の冗長構成について詳しく解説している記事もありますので、他のパターンを御検討される方は是非ご覧ください。
→AWS Direct Connect冗長化について、回避できる障害や構成パターンについて解説します。
Azure ExpressRouteの冗長構成
■イメージ図C
マイクロソフトは冗長構成で接続されたExpressRouteの専用回線について99.95%以上の可用性を保証しています。
ExpressRouteは標準で冗長構成になっていますが、SLAを満たすためにはAzureからエンドユーザー拠点までの全ての区間をActive-Activeで冗長構成にする必要があります。
Google Cloud Interconnectの冗長構成
SLA 99.9% の冗長構成
■イメージ図D
Google Cloud Interconnectの可用性99.9%保証のSLAを満たす構成です。
一つの大都市圏(メトロ)において二本以上のInterconnect回線が接続されており、そのそれぞれが異なるエッジアベイラビリティドメイン(図の「nrt-zone1-738」と「nrt-zone2-738」が該当します)に接続されている必要があります。
特長の章でも触れましたが、Google Cloud Interconnectはこの図のように、一つのロケーション内に二つのエッジアベイラビリティドメインとの相互接続点がありますので、一つのロケーションの利用のみで99.9%の可用性を保証するSLA構成を構築することが可能です。
SLA 99.99% の冗長構成
■イメージ図E
Google Cloud Interconnectの可用性99.99%保証のSLAを満たす構成です。
二つの大都市圏(メトロ)で一つずつロケーション施設を利用し、かつそのそれぞれで二つのInterconnect接続を構築する必要があります。
また、それぞれのInterconnect回線が異なるエッジアベイラビリティドメインに配置されている必要があります。計4本のInterconnect接続を構築することになります。
また、二つ以上のGoogle Cloudリージョンに少なくとも二つのCloud Routerを配置する必要があります。仮想マシンは単一リージョンの中でも良いとされています。
二つの大都市圏を使う必要がありますので、日本でこの構成を構築しようとすると東京と大阪それぞれのロケーションを利用することになり、結果としてディザスターリカバリー対策にもなる構成となります。
これら二つの図ではわかりやすくするためにDedicated InterconnectとPartner Interconnectとの違いは省略して表現しておりますが、厳密にはその二つではSLAを満たすための条件が異なりますのでご留意ください。
その二つの冗長構成について詳しく知りたい方は、Google Cloud Interconnectに関する別記事が詳しいのでそちらをご覧ください。大都市圏やエッジアベイラビリティドメインなどについての説明も記載しています。
→Google Cloud Interconnect とは?Google Cloudへの接続方法も含めて詳細に解説
OCI FastConnectの冗長構成
■イメージ図F
OCI FastConnectで可用性99.9%保証のSLAを満たす冗長構成です。
OCI FastConnectのSLAを満たすには、「データセンターを冗長化する」か、「プロバイダーを冗長化する」か、「回線を冗長化する」かの、三つのうちどれか一つの方法を用いて冗長構成を構築する必要がありますが、図Fは「回線を冗長化する」方法による冗長構成です。
こちらの図では一つのロケーションを利用し、その中で二つのFastConnect接続を構築し、かつVPNを予備回線として構築するという三段構えの冗長構成となっています。
OCIではこのようにFastConnect接続のバックアップとしてサイト間VPNを使用することを推奨しています。こうすることでFastConnectロケーションに障害が起きたとしてもVPNを通してOCIに接続することが可能です。
しかし、インターネットVPNは専用線接続と違いあくまでベストエフォート通信となるため、こちらの回線に切り替わったときに十分な通信帯域が確保される保証がありません。そのことを認識した上で構築する必要があります。
その他のOCI FastConnectの冗長構成について知りたい方は以下の記事をご覧ください。
→OCI FastConnectとは?特徴や料金も含めて解説。
各クラウド専用線のおおまかな特長
最後に、各クラウドの専用線の大まかな特長について説明します。
これまでの章の中でさまざまな点で比較をしてきましたが、その中でも特筆すべき点をピックアップして解説します。
AWS Direct Connectのおおまかな特長
物理接続タイプで1Gbps、10Gbps、100Gbpsの3つから接続帯域を選択できる
AWS Direct Connectでは物理接続タイプにおいて1Gbpsを選択することが可能です。これは専用線を検討しているお客さまにとってはかなり重要な点で、10Gbpsで物理接続タイプを利用する場合だと月額に換算すると約18万円ほどになり、かなり敷居が高いのではないでしょうか。一方で、1Gbpsだと月額で約2~3万円ほどになり、試しやすい価格になります。パブリッククラウドのトップシェアを誇るAWSにおいて、この料金で専用線物理接続タイプを導入できるのはかなり大きなメリットではないでしょうか。
実際にアット東京で提供しているAWS Direct Connect物理接続タイプの1Gbpsプランとの接続サービスは弊社の中でも売れ筋商品となっています。
*AWS Direct Connectについての詳しい解説はこちら↓
【保存版】AWS Direct Connectとは?概要やVPNとの違い、接続タイプについて詳しく解説!
Azure ExpressRouteのおおまかな特長
デフォルトが2本構成の冗長構成となる
Azure ExpressRouteではデフォルトが2本構成の冗長構成となっており、高可用性を実現するように設計されています。それにより、接続回線の一方に障害が発生しても接続が遮断されることはありません。
また、冗長構成となっている接続線ごとにAzureプライベートピアリングとMicrosoftピアリングという別のピアリングを各1つずつ含むことができます。
接続するAzureのサービスによってピアリングが異なってくるのですが、この辺りは別記事で詳しく解説しています。そちらもぜひ参考にしてください。
*Azure ExpressRouteについての詳しい解説記事はこちら↓
Azure ExpressRouteとは?概要と接続方法などについてデータセンター会社が解説
Google Cloud Interconnectのおおまかな特長
1つのロケーションで複数のエッジアベイラビリティドメインを使った冗長構成を構築できる
Google Cloud Interconnectにおいてはこれが特筆すべき特長でしょう。
データセンター内に構築されたPOPが複数のエッジアベイラビリティドメインへの接続に対応しており、冗長構成にすることができます。
どういうことかというと、1つのデータセンターに自社のオンプレミスラックを設置するだけで、99.9%の可用性保証のSLAを満たした冗長構成にすることができるということです。
また、この冗長構成にすれば、Google Cloud側の定期メンテナンス時などにシステムを止める必要がなくなります。
あくまでエッジアベイラビリティドメイン単位での冗長構成であり、マルチPOP冗長構成とはなりませんが、冗長構成の選択肢が増えることはお客さまにとってメリットです。
*Google Cloud Interconnectについての詳しい解説記事はこちら↓
Google Cloud Interconnect とは?Google Cloudへの接続方法も含めて詳細に解説
Oracle Cloud Infrastructure FastConnectのおおまかな特長
利用料金が定額で安く、非常にわかりやすい
そしてOracle Cloudですが、かなり安価な料金設定となっています。
専用線接続サービスのOCI FastConnectの料金設定も安くなっており、ポート料金の使用料のみで、データ転送には課金自体がされません。
ポートを利用した一時間当たりの料金のみしかかからないので、コストの予測がしやすいという点もメリットです。
なお、プロバイダー経由でFastConnectを利用した場合はプロバイダー側の接続サービスの料金もかかってきますので、その点はご注意ください。
*OCI FastConnectについての詳しい解説記事はこちら↓
ご紹介したメガクラウドの専用線と接続できる「ATBeX」「プレミアムコネクト」
以上、4つのクラウドの専用線を比較しましたが、いかがでしたでしょうか。
アット東京では、この記事で紹介したメガクラウドの専用線と接続できるサービスを各種ご用意しております。
各クラウドの論理型接続タイプに対応している「ATBeX」、物理型接続タイプに対応している「プレミアムコネクト」の二つがあり、これらをご利用いただくことでクラウドの専用線と接続することが可能です。
それぞれ解説ページがございますので、是非ご覧ください。
→AWS Direct Connectの「ATBeX」「プレミアムコネクト」について確認する
→Azure ExpressRouteの「ATBeX」「プレミアムコネクト」について確認する
→Google Cloud Interconnectの「ATBeX」「プレミアムコネクト」について確認する
→OCI FastConnectの「ATBeX」について確認する
*OCI FastConnectは「ATBeX」のみのご提供となっております。
その他、クラウド専用線をより詳しく知りたい、比較検討したいというお客さまは、ぜひぜひアット東京にお問い合わせください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事を書いた人 チータ
監修 すぎちゃん
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