AWS大阪リージョンとは?生まれた背景と、そのメリットについて詳しく解説します!

2021.09.22

AWS

はじめに

AWS(Amazon Web Services)は、西日本で特定のワークロードを実行する企業ユーザーを支援するために、2018年にAWS アジアパシフィック(大阪)ローカルリージョンを立ち上げました。2021年には3つのAZを備えたフルリージョンに変更。東京リージョンと同様に単一でも利用できるようになりました。

今回の記事では、この大阪リージョンが生まれた背景と、フルリージョンへの発展の経緯、そして大阪リージョンを使うことのメリットについて詳しく解説します。

目次

 

AWS 大阪リージョンとは?

大阪リージョンと東京リージョンの所在が記された日本地図

 

AWSにおけるリージョンとは?

AWSは、グローバルなクラウドコンピューティングサービスを提供するため、世界各地にデータセンターを持っています。地域ごとに分割されて管理されている、これらのデータセンターを彼らは「リージョン」という単位で呼んでいます。

リージョンとリージョンの間は完全に分離されていますので、あるリージョンで万一障害が発生しても、他のリージョンに影響がおよぶことはないように設計されています。このメリットを利用して、複数のリージョンを縦断してシステムを構築することにより、システムを運用するリージョンに大規模障害が発生した場合でも、サブシステムを運用する別のリージョンに切り替えることによって、システムの停止に見舞われることなく、高い可用性を備えたシステム運営を実現することができます。

 

アベイラビリティゾーン(AZ)とは?

1つのリージョンは複数の「アベイラビリティゾーン(availability zone: AZ)」から構成されています。

availabilityとzoneはそれぞれ日本語で「可用性」と「地域」を意味しており、例をあげると、AWSアジアパシフィック(東京)リージョンap-northeast-1 では、ap-northeast-1a、ap-northeast-1b、ap-northeast-1c、ap-northeast-1dの4つのAZが提供されています。(2021年7月現在)

AZもリージョンと同様に独立していますが、互いに高速な通信線によって接続されている点がリージョンとは異なります。同じリージョン内であればAZをまたいでデータを複製することや、別のアベイラビリティゾーンのリソースを参照することなどが可能で、リージョンと比べて、より一層シームレスにデータやリソースを連携させることができます。

AZを同時に2つ以上使用し、サーバーや機能、データを分散して配置することをMulti-AZ(マルチAZ)と呼んでいます。バックアップやフェイルオーバーについてAZを縦断してMulti-AZで運用することにより、可用性や耐障害性を高めることができます。

 

AWS大阪リージョンの特徴

AWSのアジアパシフィック(大阪) リージョンは、日本では東京リージョンに続いて2番目、アジア太平洋地域では9番目、世界では25番目に新たに開設されたリージョンです。特に西日本のユーザーは、大阪リージョンを利用することによって、レイテンシー(通信遅延)を低くすることができるのが大きなメリットです。

また、障害発生時に業務継続性要件が求められるケースの場合、直線距離で約 400km 離れた場所に位置する  AWSアジアパシフィック(東京)リージョンと組みわせて利⽤することにより、単⼀のAWS リージョン内にあるマルチ AZ 構成ではリカバリーが難しい災害への対応が可能になります。アプリケーションを、大阪リージョンと連携して冗長化したシステム構成を組んで運用することにより、災害対策がしやすくなり、複雑なワークロードや基幹系システムを異なる2地点で動かすことができます。

また大阪リージョンには3つのAZがあり、電力供給や通信回線などの物理的設備については、それぞれ他のAZと独立したデータセンター群として運営されています。このことにより、東京リージョンとの連携利用だけではなく、大阪リージョン単独でも耐障害運用を行うことが可能になりました。

 

AWS大阪リージョンが生まれた背景と発展

大阪リージョンが誕生した経緯・背景と、その発展について整理してみましょう。

 

2011年:AWS東京リージョンが正式に開設

2011年3月、AWSは東京にデータセンター(東京リージョン)を開設しました。東京リージョンはシンガポールに次いで、アジアパシフィックでは2番目、全世界では5番目のAWSのクラウドの拠点として開設され、東京でAWSを利用している企業のインフラを高速・低レイテンシーで利用できるようになりました。

日本語の24時間テクニカルサポートも開始され、AWSのベーシック及びプレミアムサポートが日本語で利用できるようになり、国内に一気にクラウドブームが到来する契機になりました。

1つのリージョンによる限界

東京リージョンの登場は、国内の企業インフラ環境を、一気にクラウド環境に移行させる効果がありましたが、国内に単一のリージョンしかないことによって、以下の2つの課題がありました。

(1)東京リージョン以外にDR(ディザスタリカバリ:障害対策)サイトが必要

(2)DRサイトは災害対策上、互いに100㎞以上離れた地点にあることが必要

大規模な災害が発生した際にも企業システムが稼働停止しないためには、十分な地理的距離を持ったDRサイトの存在は必須です。東京のみの単一リージョンでは、この面で不安がありました。

 

2018年:AWS大阪ローカルリージョンが開設

こうした流れの中で、東京リージョンの登場から7年後の2018年2月13日に、大阪ローカルリージョンが開設されました。当初、大阪リージョンは、東京リージョンのようなフルリージョンではなく「ローカルリージョン」と呼ばれる制限付の設計概念を持ったデータセンターであり、東京リージョンで稼働させているシステムやデータのバックアップとDRのための利用を前提にしていましたが、金融系のサービスなど、法制度の要件によって、データの冗長性を国内のデータセンターで確保する必要がある場合、大阪ローカルリージョンを利用できることは大きな強みとなりました。

但し、AWSにおけるリージョンには、複数のAZが存在しているのが通常ですが、大阪リージョンはこの時点でAZを1つしか持たない単一のデータセンターでした。そのため、あくまでも東京リージョンとの併用を想定されており、単独の使用申し込みにも応じていませんでした。

 

2021年:AWS大阪スタンダードリージョンとして提供が開始

前述のように、大阪ローカルリージョンは、あくまで東京リージョンに対するDRサイトというポジションであることから、メインサイトとして使うことはできませんでした。そのため、利用の形に制約があり、使い勝手に課題が残されました。

利用企業の要望に応じ、これらの課題解決のために、AWSは2021年3月2日に大阪ローカルリージョンを「単一のアベイラビリティゾーン」から「3つのアベイラビリティゾーン」に拡充し、スタンダードリージョンに変更しました。このことにより、大阪リージョン単一でも利用できるようになったため、東京リージョンのDRサイトとしての利用に限定するという制約がなくなりました。

 

ローカルリージョン時代との5つの違い 

大阪リージョンが、ローカルリージョンからスタンダードリージョンに変わったことにより、生じた変化について整理してみます。主に5つの違いがあります。

1. シングルAZから複数AZへ

当初、大阪ローカルリージョンは、あくまでも東京リージョンのDRサイトとして設定されていたため、シングルAZ(単一のデータセンター)で構成されていました。そのため、DR対応として、東京リージョンのサブ的な用途に限定され、単独での利用には不向きでした。スタンダードリージョン化によって3つのAZを備えるようになり、大阪リージョンでの単独利用に道を開きました。

2. 事前の申請と審査が不要に

大阪ローカルリージョンでは、事前の申請と審査がありましたが、フルリージョンになったことにより、他のリージョンと同様に事前申請は必要なくなり、利用者の利便性が大きく向上しました。

3. 東京リージョンとの併用が必須ではなくなった

大阪ローカルリージョンは、東京リージョンのDRサイトとしての位置づけでしたので、東京リージョンとの併用が基本となっていました。そのため、通常のリージョンのような単独利用を行うことはできませんでしたが、スタンダードリージョンになったことにより、通常のリージョンと同様に単独での利用申請ができるようになりました。

4. 無料利用枠が利用可能に

AWSの通常リージョンでは、アカウントを新規作成した日から、1年間有効な無料利用枠があります。 これを利用すれば、EC2インスタンスの場合、750時間/月までの範囲でサービスを無料で利用できるというもので、初めてAWSをトライアルとして利用する企業には大変に便利なサービスです (※) 。大阪ローカルリージョンではこれが使えませんでしたが、スタンダードリージョンに変更されたことにより、無料利用枠が利用可能になりました。

※使用できるリソースについては制限があり、EC2インスタンスの場合
インスタンスタイプは t2.micro、OSは Amazon Linux 1,2、Windows Server、Red Hat Enterprise Linux、SUSE Linux、Ubuntu Server を指定する必要があります。

5. 提供されるサービスが格段に広がった

大阪ローカルリージョンでは、使えるサービスは基本機能に限られており、仮想サーバーやバックアップ用途については利用可能ですが、クラウドネイティブのサーバーレスなアーキテクチャには非対応でした。スタンダードリージョンになり、クラウドネイティブなアーキテクチャを、大阪を含めたマルチリージョンで使えることになりました。(利用できるサービスについては次章)

 

大阪リージョンのサービス内容

フルリージョンになった大阪リージョンでは、現時点では東京リージョンとほとんど変わらない、AWSの多くのサービスを使うことができます。

以下のサービス内容は、「2021年8月時点で、弊社でAWSの管理コンソールから大阪リージョンを指定して、一つ一つ利用可能であるかを確認した」サービスになります。

あくまでも指定日時現在のものであることと、「このリージョンではまだ利用できません」と表示されるものは省いたものとなっており、実際に利用確認まではしておりませんので参考データとしてご活用ください。

コンピューティング

EC2

Lightsail

Lambda

Batch

Elastic Beanstalk

AWS Outposts

EC2 Image Builder

ストレージ

S3

EFS

S3 Glacier

Storage Gateway

AWS Backup

コンテナ

Elastic Container Registry

Elastic Container Service

Elastic Kubernetes Service

データベース

RDS

DynamoDB

ElastiCache

ネットワーキングとコンテンツ配信

VPC

CloudFront

Route 53

API Gateway

Direct Connect

Global Accelerator

開発者用ツール

CodeStar

CodeBuild

CodeDeploy

X-Ray

管理とガバナンス

AWS Organizations

CloudWatch

CloudFormation

CloudTrail

Config

OpsWorks

Service Catalog

Systems Manager

AWS AppConfig

Trusted Advisor

AWS License Manager

Personal Health Dashboard

AWS Chatbot

Launch Wizard

AWS Compute Optimizer

Resource Groups & Tag Editor

※この他に、メディアサービス、Machine Learning、IoT、分析、セキュリティ、ID、およびコンプライアンス、モバイル等の諸サービスの利用が可能です。

※大阪リージョンはC5, C5d, D2, I3, I3en, M5, M5d, R5d, T3の各インスタンスタイプを、オンデマンド、スポット、そしてリザーブドインスタンスでサポート。X1およびX1eインスタンスはひとつのAZで利用できます。

※国内2つのAWS リージョンである東京と大阪に加えて、日本の顧客は以下のインフラストラクチャも活用できます。

  • 東京にある16か所のCloudFront エッジロケーション
  • 大阪にある1か所のCloudFrontエッジロケーション
  • 東京にある1か所のCloudFront リージョナルエッジキャッシュ
  • 東京にある2か所のAWS Direct Connect ロケーション
  • 大阪にある1か所のAWS Direct Connect ロケーション

 

国内に複数のリージョンがあるのは日本とアメリカだけ

AWSはほとんどの国で、基本的には各国で1つのリージョンのみを提供しており、複数リージョンを提供しているのは日本とアメリカだけです。この点について触れます。

2つのリージョンを備える日本

AWSでは、現在25のリージョンを展開していますが(2021年6月現在)、大阪リージョンは25番目に開設された、一番新しいリージョンです。リージョンのリストを眺めてみるとほとんどの国では多くても1つのリージョンしか提供されていないのに対し、米国では4つのリージョン(バージニア北部、オハイオ、北カリフォルニア、オレゴン)、日本では2つのリージョン(東京、大阪:ローカル)がそれぞれ提供されています。1つの国内に複数のリージョンが存在するのはアメリカと日本だけとなっています。

 日本とアメリカのリージョン一覧

AWSが重要視する日本市場

日本のような狭い国土の中に、東京、大阪の2つのリージョンが設置されたことは、AWSの米国本社が、日本を重要な市場として考えている一つの証とも言えるでしょう。アマゾンウェブサービスジャパンは2021年3月2日、代表取締役社長の長崎忠雄氏による事業戦略説明会において、2021年の注力分野として「日本国内のインフラストラクチャの拡充」「クラウド移行を加速させる顧客支援体制の強化」「次の10年を見据えたクラウド人材育成」の3つを掲げています。

また、この説明会において長崎氏は、大阪リージョンについて、「ローカルリージョンと違って、AWSの幅広いサービスに対応可能であり、オンデマンドインスタンスやSavings Plansも適用できるようになる」と語り、マルチAZ構成が可能になることで、ミッションクリティカルなワークロードや基幹系システムを国内の2つの地域で稼働するといったニーズに対応可能になると強調しています。

 

AWS大阪リージョンを使うことのメリット

企業がAWS大阪リージョンを使うことで、具体的にどのようなメリットがあるかについて、具体的に説明します。

 

1.西日本から接続する場合のレイテンシー(遅延)が低くなる

西日本の企業が大阪リージョンを利用すると、一般的に通信速度やレスポンスが向上し、レイテンシー(通信遅延)が低くなります。もっともインターネット経由で通信する場合には、日本のIX(インターネット・エクスチェンジ、中継所)の9割が東京に集中しているので、東京が早い場合もありますが、特にAWSと企業LAN環境を低遅延で接続するAWS Direct Connectサービスを利用してクローズドな接続を確立し、AWSを自社イントラ環境の拡張として使う場合には明らかに高速な通信環境が得られ、大阪リージョンは有力な選択肢になります。

以下に示すのは、大阪リージョンから各地域への平均的なレイテンシーです。

都市 レイテンシー
名古屋 2-5 ms
広島 2-5 ms
東京 5-8ms
福岡 11-13 ms
仙台 12-15 ms
札幌 14-17 ms
ソウル 27 ms
台北 29 ms
香港 38 ms
マニラ 49 ms

※2021年8月時点での数値です。
※詳しくは以下の公式ページを御参照ください。
AWS アジアパシフィック (大阪) リージョンが3つのAZと多くのサービスと共に開設

 

2.AWSの幅広いサービスが東京リージョンと同価格で利用可能

大阪リージョンの主要サービス利用料金は基本的に東京リージョンと同一であり、現時点では約半分ほどの主要なサービスを東京リージョンと同等に利用できます。(※)

※利用できるサービス数(2021年8月時点)

・東京リージョン:174
・大阪リージョン:84

※詳しくは以下の公式ページを御参照ください。
AWS リージョン別のサービス

 

3. 東京リージョンと併用、DR化を実現できる

AZは通常100km以内に位置するとされています。AZをディザスタ対策として活用することも無論可能ですが、大規模な災害が発生したときに企業システムが稼働停止しないためには、DRサイトに十分な地理的距離(少なくとも数百km以上)が求められます。その場合にはMulti-AZ 構成をとっても要求を満たすことができません。

この点において、ローカルリージョンとして登場した大阪リージョンは、東京リージョンから400km離れているため条件を満たしており、十分な地理的距離があるDRサイトとして活用できる可能性が開かれました。

 

大阪リージョンの活用法

上記のような特性を考え、大阪リージョンは次のような要件を持つ顧客への提案に好ましいと考えられます。

1. 西日本地区の顧客における基幹システム等のオンプレミスからの移行先としての提案

以前からオンプレミスからAWSへの移行を考えてはいたが、レイテンシーなどの問題で踏み切れなかった西日本の企業に対して、東京リージョンと同等のサービス利用をアピールできます。

2. 既に東京リージョンを使用中の顧客へのDRリージョンとしての提案

国内にサーバーを置きたい意向があり、既に東京リージョンを利用している顧客のDRリージョンとして、提案メリットがあります。

3. マルチリージョン要件があるシステムの構築

金融など「ミッションクリティカルな大規模災害時にも稼働もしくはすみやかな回復が求められるシステムをリージョンを縦断して設定し、高い可用性を確保する要件」がある企業への提案において訴求効果があります。

 

ATBeXならAWS大阪リージョンとも接続可能

 東京リージョンと大阪リージョンを用いたDR構成図

アット東京が提供している接続サービス、ATBeXは東京と大阪のAWS Direct Connectロケーションとつながっていますので、AWSの東京リージョンと大阪リージョンの二つのリージョンを用いたDR構成を構築することが可能です。

他にも様々な構成パターンを構築することができ、東京のデータセンターのみにラックを置き、AWSへの接続だけDR化するというようなことも可能です。

詳しくはぜひお問い合わせください。

この記事を書いた人 チータ

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