マルチクラウドとは?どのようなメリットがあるのか、ハイブリッドクラウドとの違いも含めて解説!

マルチクラウドとハイブリッドクラウドの違い

はじめに

本記事では、マルチクラウドの利用・構築を検討されているお客さま に向けて、マルチクラウドの概要やメリット・デメリット、混同される「ハイブリッドクラウドとの違い」について、データセンター運営企業の立場からわかりやすく 解説します。

また、3大パブリッククラウド の「AWS、Azure、Google Cloud」を中心に、Oracle Cloud、IBM Cloudから国産クラウドまで、各クラウドサービスの得意分野を紹介します。

本記事を一読いただく と、マルチクラウドの全体像から構築時の注意事項まで、検討ポイントを整理できると思います。

目次

 

マルチクラウドとは?

概要

マルチクラウドとは、複数のクラウドサービスを組み合わせ、運用環境を構築する手法です。異なるベンダーのクラウドサービスを併用し、「自社独自の運用形態」を構築します。

マルチクラウドの定義として、「AWS」や「Azure」など、IaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)などのインフラレイヤーに加え、SaaS(Software as a Service)やDaaS(Desktop as a Service)など、アプリケーションレイヤーのサービスを組み合わせて環境構築することも、マルチクラウドに含みます。

各クラウドサービスの良いところを組み合わせて、自社環境や運用に合わせ「最適な姿」を目指すのがマルチクラウドの考え方です。

ハイブリッドクラウドとの違い

マルチクラウドとよく混同されるのが「ハイブリッドクラウド」です。一般的にハイブリッドクラウドは、「オンプレミスのプライベートクラウド」と「パブリッククラウド」を組み合わせて利用する形態を指します。

一方、マルチクラウドは「複数のパブリッククラウド」を同時に併用する運用形態を指します。

ハイブリッドクラウドの利用例として「顧客情報の保管・開示を行うシステム」が挙げられます。機密性の高い顧客情報をオンプレミスのプライベートクラウドで保管し、パブリッククラウド側で情報公開を行うといった構成です。

このように機密管理の関係で、一部のデータやシステムを「バブリッククラウドに持っていくことが好ましくない」ため、ハイブリッドクラウド構成を選ぶケースがあります。

なぜマルチクラウドを構築するのか?

企業がマルチクラウドを採用する理由として「リスクの軽減」が挙げられます。

昨今、サイバー攻撃の脅威が増しており、震災等の災害リスクも増大しています。どれだけ信頼性の高いクラウドサービスでも、サイバー攻撃の被害や物理的な障害により、機能停止する可能性があります。

マルチクラウドを採用することで、一つのクラウドサービスが機能停止しても、別のクラウドサービスで業務継続できるため、リスク分散が可能です。

一方で、マルチクラウド採用に至る経緯として、システム構築を担当する「SIerの事情」でやむをえずマルチクラウド化する場合もあります。

SIerが自社の推奨するクラウドサービスを組み込みたい等の理由で、顧客が希望するクラウドサービスと併用し、「気づいたらマルチクラウドになっていた」というケースもあります。

このように運用最適化を目指し、自発的にマルチクラウドを推進するケースもあれば、SIer主導で構築が進んだ結果、ベンダー都合でマルチクラウド化するケースもあるのです。

マルチクラウドのメリット

各ベンダーのクラウドサービスを組み合わせ「独自の運用形態を構築」できる点が、マルチクラウドの強みです。マルチクラウドのメリットは以下のようなことがあります。

 

1, パブリッククラウドごとに得意分野を組み合わせることができる

主要なクラウドベンダーのパブリッククラウドは、さまざまな技術や多くの機能が備わっています。一方で、最新技術の採用状況や提供する機能は、各クラウドサービスでバラつきがあります。

また、仮想サーバーやベアメタル、GPUやネットワークのデータ転送量など「課金の考え方」もサービスによって異なります。

マルチクラウド環境であれば、複数のクラウドサービスから機能やコストに応じて、最適なものを選ぶことができます。マルチクラウドは、得意分野の組み合わせができることがメリットと言えるでしょう。 

2, 一社のクラウドサービスに依存せず柔軟にシステムを構築できる

特定の一社のベンダーに縛られることを「ベンダーロックイン」と呼びますが、マルチクラウドの場合、一社のクラウドサービスに依存しない環境構築が可能です。

特定ベンダーに依存してしまうと、他社のクラウドサービスへの切り替えが困難になるケースがあります。マルチクラウドを採用することで、「ベンダーロックイン問題」を回避でき、柔軟なシステム構築が可能です。

3,システムを別のクラウドを組み合わせた冗長構成にすることによって可用性があがる

マルチクラウドでシステムを冗長化することで、可用性の向上を実現できます。例えば、異なるベンダーが提供するパブリッククラウドを利用し、本番環境とバックアップ環境を分けて構築する方法があります。

本番環境のデータを、バックアップ環境に「データバックアップ」しながら運用が可能です。障害発生時に、アプリケーションや重要なデータへのアクセスを保護できます。

また、一つのクラウドにアクセスが集中することを回避でき、データ通信量が分散されるため、システムの可用性が向上します。

マルチクラウドのデメリット

マルチクラウドは柔軟なシステム構築が可能な一方で、デメリットも存在します。マルチクラウドのデメリットは以下のようなことです。

1, 複数のサービスを併用するため管理が煩雑になる

マルチクラウド運用は、管理方法や運用方法が異なるサービスを併用するため、シングルクラウド運用に比べて管理が煩雑になりがちです。

各クラウドサービスの操作画面が異なり、複数のクラウドサービスに合わせた手順ガイドの作成や、対応するための人員・保守体制が必要です。

また、クラウドサービスのアップデートや、新機能の対応時にも工数が掛かり、管理者の負担が増します。   

2, クラウド間で通信が必要になる場合レイテンシーが高くなることがある

マルチクラウド環境化では、構築状況によってレイテンシーが高くなる場合があります。

レイテンシーとは、「データ転送における指標」のひとつです。転送要求を出し、実際にデータ送信されるまでに生じる「通信の遅延時間」を指します。

データセンター同士の距離や、複数クラウドの交信頻度によって、マルチクラウド利用時はレイテンシーが高くなる可能性があり、注意が必要です。

3, 複数クラウドを使用するため高コストになることがある

複数ベンダーのクラウドサービスを利用することで、運用コストが割高になりがちです。複数の契約が重なるため、1つのクラウド契約のみと比べて、高コストになる可能性があります。

また、複数クラウドの運用は、「学習コストの増加」や「対応人員の増加」を招きます。

契約するクラウドの数だけ対応工数も増えるため、事前の考慮が必要です。 

パブリッククラウドのそれぞれの得意分野

マルチクラウドを構築する場合、さまざまな組み合わせの選択肢があります。

三大パブリッククラウドである「AWS、Azure、Google Cloud」と、大手ベンダーである「Oracle Cloud、IBM Cloud」のパブリッククラウドについて、それぞれの特徴や得意分野を紹介します。

AWS

AWSはAmazonが提供するパブリッククラウドサービスです。2006年からサービスを開始し、主要なパブリッククラウドサービスの中で、最も歴史が古いクラウドサービスです。

AWSの強みは、サーバーやストレージなどのインフラを提供するIaaS(Infrastructure as a Service)の種類が豊富な点です。

ストレージ機能のほか、ビッグデータ解析などのアナリティクスツールや、モバイルサービス、アプリケーションサービスなど、豊富なサービスから選択して利用可能です。

サービス開始してからの歴史が古いため、AWS構築が得意なSIerも数多く存在し、AWSを使いこなせる技術者数が多い点もメリットに挙げられます。 

Azure

Azureは、WindowsやMicrosoft Officeを提供するMicrosoftが提供するパブリッククラウドサービスです。2010年10 月に「Windows Azure」として、サービスが開始されました。

またクラウドサービスだけでなく、オンプレミスでもAzureと同機能を利用できる「Azure Stack」が提供されています。

Azureは、Microsoft技術と親和性が高いことが特徴です。ユーザー認証用に「Azure Active Directory」が用意されており、企業ネットワーク内の認証とAzureの認証を容易に統合可能です。

「Windows Virtual Desktop」のようにクラウドで仮想デスクトップを動かせるサービスや、ワークスタイルの中心となる「Microsoft 365」との連携もスムーズに行えます。

Google Cloud

Google Cloudは、Googleが提供するパブリッククラウドサービスです。日本では2016年11月から、サービス提供を開始しました。

Google Cloud の特徴は「Google検索、Gmail、YouTubeなど、世界中に提供されているサービスと同一のインフラを低コストで利用できる点です。

一日あたり「55億回」とされる検索を瞬時に返すGoogle検索、一日あたり10億時間以上の動画再生に耐えうるYouTube、それらGoogleのサービスと同一インフラを自社で利用できるというのは、それだけで期待感が高まるのではないでしょうか。

その他に、機械学習やデータ分析機能に優れているのが特徴です。

また、Google Cloud のネットワークは負荷分散されており、高速な通信かつ、通信障害も起こりにくい環境で開発業務を行えます。

Oracle Cloud

Oracle Cloudは、Oracleが提供するパブリッククラウドサービスです。

Oracle Cloudは、従来のIaaSとオンプレミスの良いところ取りをした「次世代IaaSサービス」と謳っています。

オンプレミス環境と同等のパフォーマンスを実現し、従来にはないハイパフォーマンス性能を発揮します。

また、ベアメタルマシンに強みがあり、大規模データを短時間で処理するビッグデータ解析向けに、最適な環境を用意しています。

またOracle Databaseとの親和性が高く、Oracle Databaseをクラウド環境に移行することで、コスト削減やセキュリティ強化が実現可能です。

IBM Cloud

IBM Cloud は、IBMが提供するセキュアなビジネス向けクラウドです。IBM Cloudの特徴は、豊富な実績を誇るAIサービス「Watson」を活用したアプリケーション開発が可能な点です。

ベアメタルサーバーを提供する数少ないパブリッククラウドで、オンプレミスからの移行やハイブリッドクラウド環境が容易に構築できます。

アット東京のロケーション内には、IBM Cloudのサーバーファームがあることが公表されています。

一般的にサーバーファームは郊外の安いデータセンターに構築しますが、IBM Cloudはサーバーもポップもアット東京のデータセンター内にあります。

本環境によってレイテンシーが低くなり、オンプレミスを使うような速さを実現し、レイテンシー1m sec以下でつながります。

またIBM Cloudはベアメタルサーバー専用のため、他ユーザーの影響を全く受けない点がメリットです。 

国産クラウド

続いて国産クラウドを紹介します。国産クラウドのメリットは、日本企業向けに合わせた柔軟なサービスプランや、運用支援が可能な点です。

メガクラウドの場合、障害発生時に問い合わせすると「ホームページに対応方法が載っているため、該当ページをご覧ください」といった対応になりがちです。

国産クラウドの場合、問い合わせ対応に安心感が持てる点や、国際情勢が乱れた場合でも、国内で安定的に運用が可能です。

ここでは、アット東京のATBeXから接続可能な国産クラウドについてご紹介いたします。

S-Port クラウド(鈴与シンワート)

S-Portは、鈴与シンワートが提供するクラウドサービスです。自社でデータセンターを保有する強みを活かしたサービス提供が特長です。

ハウジングサービスやベアメタルサーバー、IaaSなどのITインフラ提供から、基幹業務システムや各種業務パッケージ導入まで、シームレスに対応します。

S-Portが提供するクラウドサービスのほか、複数のクラウドサービスを組み合わせたハイブリッド環境も構築可能です。

オンプレミスやモバイル環境、リモートワーク環境などから、セキュアに接続するネットワークサービスを提供します。

EINS WAVE(インテック)

EINS WAVEは、TISインテックグループの株式会社インテックが開発したクラウドサービスです。多彩なサービス導入から運用まで、トータルに提供します。

データセンターからクラウド、ネットワーク、EDI、セキュリティを中心に、お客さまの課題に応じたITインフラ環境の構築からサポートまで、ワンストップで提供できることが強みです。

U-Cloud(ユニアデックス)

U-Cloudは、ユニアデックスが提供するクラウドサービスです。2008年に登場した日本初の本格的なクラウドサービスで、700社を超えるお客さま基幹系システムで採用実績があります。

ICTリソースの理想的な「共有」と「利用」を実現し、ICT環境を最適化します。

またクラウド基盤の提供だけでなく、さまざまなクラウドサービスを最適に組み合わせ、マルチクラウドやハイブリッドクラウド環境で利用可能です。 

アット東京の接続サービス、「ATBeX」を使えばマルチクラウドの構築が容易です

1.アット東京のデータセンターには複数のクラウドPOPが存在

アット東京データセンターのクラウドポップ

アット東京の中には複数のクラウドとの接続点であるPOP(専用接続するためのクラウド側の設備のこと)が存在しています。

パブリッククラウドと専用線で接続するためには、データセンターの中にあるクラウドPOPと繋ぐ必要がありますが、アット東京のデータセンターの中には複数のクラウドPOPが存在しています。

そのため、アット東京のデータセンターの中にお客さまのオンプレミスサーバーラックを設置することで、容易にマルチクラウド環境を構築することが可能です。

2.クラウドPOPを複数組み合わせて接続可能なサービス「ATBeX」

アット東京の接続サービス、「ATBeX」を利用すれば複数のクラウドPOPと相互接続をすることが可能です。

この記事でも紹介した「AWS」「Azure」「Google Cloud」「IBM Cloud」「Oracle Cloud」の論理接続タイプに対応しており、50Mbps~10Gbpsの間で必要な接続帯域を選んでご利用いただけます。

ATBeXでは1つの物理接続で複数の論理接続を作ることができ、かつ接続ごとに接続するクラウドと帯域を設定するといった作業を短期間に実施できるため、お客さまのネットワーク運用を効率化できます。

ATBeXの詳細はこちら↓

https://atbex.attokyo.co.jp/about/

3.仮想マネージドルータなら最短距離でクラウド間のトラフィックを折り返せる

仮想マネージドルータのイメージ図

ATBeXでは、仮想マネージドルータサービスも提供しています。仮想マネージドルータサービスは、クラウドにつなぐ場合に必要となるBGP対応のルータ機能を提供するサービスです。

仮想マネージドルータの役割としては、高速道路のジャンクションをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。

ジャンクションが、信号のない高速道路で車のスピードを落とさずに路線同士を交差させるのと同じように、仮想マネージドルータをデータセンター内に配置して使えば、クラウドからのトラフィックを最短経路で別のクラウドに折り返すことが可能です。

クラウドからのトラフィックをお客さまのWAN回線側に流す必要がなくなり、データセンター内で完結できますので、障害ポイントが減り、伝送遅延時間も低くなるなど、マルチクラウドを運用する上でのコストが下がり、可用性が上がります。

マルチクラウド構築をお考えの方は是非お問い合わせください

以上の3点から、マルチクラウドを構築し運用するのであればアット東京のデータセンターは非常に便利です。

マルチクラウド構築をお考えのお客さまは是非お問い合わせください。



 

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