ExpressRoute を物理的に deep dive する (第3回)

2022.03.10

Azure連載

はじめに

こんにちは!日本マイクロソフトの鈴木です。  

普段は Azure の Networking 製品のテクニカルサポートを担当しています。

[前回の記事] では、 ExpressRoute を介したオンプレミスと Azure の接続パターンについてご紹介しました。

今回はより具体的なデータセンター内の物理構成にフォーカスし、 ExpressRoute に関わるコンポーネントや、 Microsoft や Azure のネットワークとの接続ポイントである MSEE (Microsoft Enterprise Edge) との 接続/管理モデル についてご紹介します。  

(前回の記事の ExpressRoute Edge は MSEE を指しています。)

目次

 ExpressRoute でオンプレミスから Azure に接続する際の概要

まずは ExpressRoute でオンプレミスから Azure に接続する際に、どのようなコンポーネントが登場するかをご紹介します。 

オンプレミス側のルータは CE (Customer Edge) と呼ばれ、プロバイダとの接続を担います。  

次に Provider Network の入り口となるルータを PE (Provider Edge) と呼び、今回は接続する機器によって PE (Customer side) と PE (MSEE side) と呼び分けることとします。 

最後は Microsoft や Azure ネットワークとの接続ポイントである MSEE です。こちらは必ず 2 台で冗長化され、 Active-Active で動作します。

今回は、この PE (MSEE side) と MSEE 間の接続にさらにフォーカスしていきます。

※図中の線は実際の物理的な結線とは異なる場合があります。  

※便宜上、MSEE 以外のコンポーネントについても 2 系統で冗長化されているものとします。

PE (MSEE side) と MSEE 間の接続モデル

PE (MSEE side) と MSEE 間の接続には、大きく分けて "Service provider model" と "Direct model" の 2 つが存在します。  

Service provider model では、 PE (MSEE side) と MSEE 間にプロバイダのネットワークが存在し、両者間を仮想的に直接接続している様に見せかけます。

この接続モデルが、いわゆる通常の ExpressRoute に当たります。

ExpressRoute では、 1 契約につき 1 ペア (物理的には 2 回線) が、 50Mbps ~ 10Gbps で 払い出されます。

Direct model では、PE (MSEE side) と MSEE の間にプロバイダのネットワークは存在せず、両者間を光ファイバーで直接接続します。

この接続モデルが、いわゆる ExpressRoute Direct に当たります。

ExpressRoute Direct では、 1 契約につき 10Gbps 又は 100Gbps の物理回線が提供される他、確保した回線を柔軟に切り出して使用することが可能です。

例えば、100Gbps で回線を契約した場合は、「10Gbps の論理的な回線を 10 本」といった具合に、ユーザ側で回線を分割して利用できます。

PE (MSEE side) の管理モデル

PE (MSEE side) は、プロバイダ管理のルータを使用する場合と、ユーザ管理のルータを使用する場合があります。  

これは ExpressRoute をご利用いただくプロバイダとの契約によって異なります。

PE (MSEE side) にプロバイダ管理のルータを使用する場合は、基本的にはプロバイダが MSEE との接続に関する設定や運用等を対応します。  

※実際の対応範囲はプロバイダとの契約によります。

対して、 PE (MSEE side) にユーザ管理のルータを用いる場合は、 MSEE との接続や接続後の運用等をユーザ側で対応する必要があります。  

柔軟に構成が組める反面、BGP の制御や、障害時の調査等もユーザ側である程度実施する必要があり、プロバイダ管理のルータを使用する場合に比べてユーザへの負荷は大きくなります。

ExpressRoute をご利用いただく際は、ぜひ PE の契約形態についても考慮いただけますと幸いです。

おわりに

ExpressRoute でオンプレミスから Azure に接続する間にはどのようなコンポーネントが存在するのか、中でも重要な MSEE との接続には、どのような 接続/管理モデル が存在するのかを紹介しました。

ExpressRoute に関わるコンポーネントを理解することが出来れば、障害発生時の切り分けがスムーズに行えます。

また、 MSEE との接続モデルやルータの管理モデルについて理解することが出来れば、実際に ExpressRoute をご利用いただく際、自社のニーズに沿った最適な選択をすることが出来ます。

今回ご紹介した内容が、 ExpressRoute を利用いただく際の助けになれば幸いです。

この記事を書いた人 日本マイクロソフト 鈴木

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