2022.06.23
今や野球に興味のない人でもエンジェルスの大谷選手知らない人は少ないでしょう。
でも、大谷選手が投手としてマウンドに立っている映像を見ていて、おやっ?と思いました。
それはメジャーリーグのキャッチャーです。
普通キャッチャーは指でピッチャーにサインを出しますが、あれっ?ちょっと違うぞ。
代わりに手首のところで何かやってると思ったら、なんと「PitchCom(ピッチコム)」という送信機を使ってサインを送っているのです。投手はこれで球種とコースを音声で聞きます。試合時間の短縮とサイン盗み防止で今年からやり始めたとか。
私も野球は少しは知っているつもりでしたが、知らない間に技術が進歩していました・・・。
さて、技術の進歩と言えば、クラウドです。
技術の進歩によって、私の知らない間に、空に浮かんでいる雲がコンピューターの
役割をするようになっていたなんて、技術の進歩って本当にすごいですね・・・
ってさすがにそんなわけありません!お空に雲みたいにコンピューターは浮かんでいません。
でも、雲の中にコンピューターがあると本気で思っていた人がもしいたとしたら、それはそれで
夢のあるユニークな発想ができる方ですよね。
ということで、超基礎講座の第2回をはじめます。
今回のテーマは「クラウドって何?」です。
クラウドの定義
クラウドとは、クラウドコンピューティングあるいはクラウドサービスを指します。
図1)クラウドとは
図1のイメージです。クラウド事業者の持つ共用のコンピューティングリソース
(ネットワーク、サーバー、ストレージ、アプリケーションサービス)をインターネットなどのネットワークを経由して、必要なときに、必要な分だけ、すぐに利用することができるという考え方、概念です。あるいは、そういう考え方にもとづいたサービスがクラウドサービスです。
クラウドを実現する技術 -仮想化-
クラウドを実現するために必要な技術でわかっておきたいのが、仮想化です。
もちろんクラウドの技術は仮想化だけではないですが、1つに絞りますので、
少しでも雰囲気を感じてイメージしてもらえればと思います。仮想化とはどういうものか、
サーバーの仮想化の場合で説明します。
図2)仮想化イメージ
図2を見てください。まず左側がオンプレミスです。
例えば、各用途ごとにWebサーバー、ファイルサーバー、DBサーバーと3台のサーバーを
オンプレミスで構築したとします。このとき、各物理サーバーでCPUやメモリなどのリソースを使い切ることは難しいです。CPUやメモリなどのリソースはどうしても余る可能性が高くなります。というのも、サーバー構築の際、各業務の
ピーク時に必要となる処理能力を考えて、
そのピーク時でも対応できる能力をもつ物理サーバーを用意するからです。
例えば、Webサーバーにアクセスしてくるユーザー数の処理能力を仮に平日100とします
(数字はイメージしやすいように書いたもので、何らかのスペックを表すよう意味はありません)。
もし、土日にはそれが1,000ぐらいに急増するのであれば、1,000を処理できるサーバーを
用意しておく必要があります。ギリギリだと怖いので、少し余裕を見て1,500ぐらいまで
処理できるサーバーにしたりします。
反対に、想定していたほどWebサーバーにアクセスがなく、平日は50、土日も
500以下だったら、1,500も処理できるサーバーはオーバースペックになります。
また、オンプレミスで新規に業務アプリケーションサーバーを立てようとなったときは、
物理的なサーバーを1台追加発注することになります。見積をとって、注文書に押印して・・・というプロセスをやることになるため、1ヶ月、2ヶ月、いやいやそれ以上、
もしかしたら何ヶ月といったレベルで時間がかかるかもしれません。
一方のクラウドはどうでしょう。
サーバーを仮想化するということは、1台の物理サーバーの上で、仮想化ソフトウェア
を使うことで、論理的に独立した複数のサーバーを動かすことができるようにすることです。
この仮想化ソフトウェアによって、各サーバーのリソースは論理的に扱える
ようになります。論理的に扱えるようになっているので、各サーバーの処理能力に無駄な余裕を持たせる必要はなく、
足りなくなったらすぐに処理能力を増やすことができます。
新規で業務アプリケーションサーバーを1台増やしたいというときも、すぐに増やすことができます。
使用状況をモニタリングしておいて、「足りなくなったら増やす」を自動化しておくこともできます。
反対に想定していたほどWebサーバーのアクセスが伸びなかった場合でも、実際に使った分
だけのお金を支払うだけなので、無駄なコストを払わなくて済みます。
クラウドの種類
パブリッククラウド、プライベートクラウド
パブリッククラウドは、ユーザーを限定せず不特定多数のユーザーがクラウドを利用する
形態です。海外ではAmazonのAWS、MicrosoftのAzure、GoogleのGoogle Cloud、IBMのIBM Cloud、Oracleの
Oracle Cloud Infrastructure、AlibabaのAlibaba Cloudなどです。
国内も多数の各通信/ISP事業者、SIerなどが各社それぞれサービスを提供しています。
なお、AWS、Azure、Google Cloudは3大メガクラウドと呼ばれています。
一方プライベートクラウドは、クラウドの技術を活用して自社でクラウド環境を構築し、
利用するもので、クラウド事業者と同じことを自社で社内向け、グループ会社向けにすること
です。
なお、パブリッククラウドとプライベートクラウドの両方を組み合わせて利用する場合は
ハイブリッドクラウドと呼ばれます。
SaaS、PaaS、IaaS
図3)SaaS、PaaS、 IaaSのクラウド事業者とユーザーの責任範囲
図3を見てください。これは何を表しているかというと、クラウド事業者がクラウドサービスを提供し、ユーザーがそれを利用するとき、クラウド事業者がどこからどこまでやってくれる
のか、ユーザーはどこからどこまでをやらないといけないのかという責任範囲を表しています。
SaaS(Software as a Service:サース、サーズ)は、ソフトウェアを購入して
自社のサーバーやPCにインストールすることなく、ソフトウェアの機能をインターネットなどのネットワークを経由してサービスとして提供することです。ユーザーはソフトウェアという
かたちで用意された機能を使うだけですが、データの管理はユーザー自身の責任で管理します。
PaaS(Platform as a Service:パース)は、クラウド事業者がミドルウェアまでを
提供してくれますが、アプリケーションは提供されません。アプリケーションは自社で開発することになります。
アプリケーションを作ったらすぐ、使えるような実行環境までをクラウド
事業者が用意してくれるので、インフラの調達やセットアップなどに労力をかけることなく、
ユーザーはアプリケーションの開発だけに集中すればよいわけです。
IaaS(Infrastructure as a Service:イアース、アイアース)は仮想化された
インフラだけが提供されます。クラウド事業者が保有するハードウェアを仮想化し、
論理的に、ソフトウェア的に扱えるようにし、分割します。分割した1つの区分を利用者に
割り当てます。仮想サーバーであれば、これにユーザー自身でOS、ミドルウェア、
アプリケーションを組み込んで構築し、ユーザー自身で管理します。
クラウドの5つの特徴
アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が定めたクラウドの特徴は以下の5つです。
オンデマンドセルフサービス
オンプレミスだったら、SIer(システムインテグレーター)などサービスを提供する会社に声をかけて、その会社の
営業さんや技術者の方と打合せして、見積もらって注文書に押印して提出
します。その後、1ヵ月とか2ヶ月とか待って、コンピューターが届き、それから設定作業なとをしてやっと使えるように
なります。
でもクラウドだと、使いたいと思ったら、ブラウザからクラウド事業者のWeb画面に行って、人手を介さずに自分で
申し込むことによって、すぐに使えるようになります。
幅広いネットワークアクセス
PC、スマートフォン、タブレットなどインターネットにつながればさまざまな情報端末から
アクセスできます。
リソースの共有
実際にそのコンピューティングリソースがどこにあるのかはわかりませんが、
複数の利用者で共有して使います。
迅速な拡張性
必要に応じてCPU、メモリなどのリソースの処理能力を増やしたり、逆に減らしたり
といったことがすぐにできます。
計測可能なサービス
使いたいときに、使いたい時間だけ使え、時間や、使ったデータ量が計測されていて、その分だけ課金される従量制です。
出典:NIST Lee Badger,Tim Grance,Robert Patt-Corner,Jeff Voas
「クラウドコンピューティングの 概要と推奨事項」2012年5月、2-1
クラウドのメリット
コスト面
まず、1ユーザー専有のオンプレミスと違い、クラウドは基本的に複数のユーザーで
共用するサービスで、経済的です。オンプレミスの場合ピーク時に必要な処理能力を
想定して、そのピーク時でも処理できるコンピューティングリソースを購入します。
一括購入すれば当然初期コストがかります。フルに使っても、あまり使わなくても
コストはかかります。ピーク時以外は処理能力に余裕のある状態となり、コスト面だけで
言うと、ちょっともったいないわけです。
一方で、クラウドは、使いたいときに使いたい分、使いたい時間だけ使うことが
できます。
使い方に応じた料金となり、料金は変動します。想定と違ったとしても無駄なコストは発生
しにくくなります。
柔軟性
オンプレミスの場合、サーバーを増やしたいと思っても、じゃあ明日から1台増やしますというように簡単には
いきません。時間がかかります。
でも、クラウドならユーザーがWebの管理画面上から自分で、すぐにできてしまいます。激しく変化するビジネス
ニーズに応じて、コンピューティングリソースを増やしたり減らしたり柔軟に対応できます。
可用性
可用性は、システムが障害などにより停止することなく稼働し続ける度合いのことで、稼働率が指標となります。100時間のうち、障害でシステムが停止した時間が10時間あったら、
稼働率は90%です。可用性を高めるには本番用のシステムとは別に予備用のシステムを
用意し、処理が止まらないようにしたり、データが消えないようにしたりします。
これは、オンプレミスでやるよりも、クラウドでやる方が低いコストで実現しやすいのです。
また、クラウドは1つのサービスそれ自体が最初から高い可用性をもっていたりします。
例えば、AWSではS3(Simple Storage Service)というデータを格納しておくための
ストレージサービスがあります。S3(Standardの場合)は3つのアベイラビリティゾーン(AZ:1つまたは複数のデータセンターのこと)にデータを格納するため、1つのAZに障害があっても影響が出ないようになっています。
オンプレミスで同じことをやろうとしたら、3倍のコストをかけて、3倍のストレージ容量を用意することになります。
高い可用性の実現が低コストで実現できるのはクラウドの大きなメリットの1つです。
まとめ
1.クラウドの定義
クラウド事業者の持つ共用のコンピューティングリソースをインターネットなどの
ネットワークを経由して、必要なときに、必要な分だけ、すぐに利用することが
できるという考え方、概念、サービス。
2.クラウドを実現する技術 –仮想化-
サーバーの仮想化
1台の物理サーバーの上で、仮想化ソフトウェアを使うことで、論理的に独立した複数
のサーバーを動かすことができるようにすること。
3.クラウドの種類
- パブリッククラウド=ユーザーを限定せず不特定多数のユーザーがクラウドを利用する形態。
- プライベートクラウド=クラウドの技術を活用して自社でクラウド環境を構築し、利用する
形態。
4.クラウドの5つの特徴
- オンデマンドセルフサービス
- 幅広いネットワークアクセス
- リソースの共有
- 迅速な拡張性
- 計測可能なサービス
5.クラウドのメリット
コスト面
複数のユーザーで共用するサービスで、経済的。使いたい分、使いたい時間だけ使うことができ、無駄が発生しづらい。
柔軟性
激しく変化するビジネスニーズに応じて、コンピューティングリソースを増やしたり減らしたり柔軟に対応可能。
可用性
複数のユーザーで共用するサービスなので、低コストで冗長化しやすく、1つのサービス
それ自体が最初から高い可用性を持っているものもあり、高い可用性が低コストで実現可能。
いかがでしょうか?
クラウドのイメージはつかめたでしょうか?
ブログの内容が少しでもお役に立てれば幸いです。
それではまた!
この記事を書いた人 @Sherpa
同じカテゴリーの記事
-
2022.08.18
-
2022.07.14
-
2022.05.19