Azure Route Server とはなにか (第1回)

2022.09.15

Azure連載

はじめに

前回までの記事、ExpressRouteについて説明してきました。

今回は、ExpressRouteとの関連で見かけることが少しずつ増えている、Azure Route Serverについて解説していこうかと思います。

Azure Route Serverとはなにか

Azure Route Serverは2021年03月にPublic previewとなり、2021年09月にGAを迎えた、ネットワーク系のサービスです。

Azure FirewallやApplication Gatewayなどといったわかりやすいサービスとは異なり、少しわかりづらいというか、複雑なサービスかと思います。

より正確には、Azure Route Server自体が複雑というわけではなく、Azure Route Serverを使うことで少し複雑な構成を実現できる、ということかなと感じています。

Azure Route Serverについて、まずはdocsを見ていただくのが一番かなとは思います。


> Azure Route Server を使用すると、ネットワーク仮想アプライアンス (NVA) と仮想ネットワークの間の動的ルーティングが簡単になります。 これにより、ルート テーブルを手動で構成したり管理したりすることなく、BGP ルーティング プロトコルをサポートする NVA と Azure Virtual Network (VNet) 内の Azure ソフトウェア定義ネットワーク (SDN) 間で Border Gateway Protocol (BGP) ルーティング プロトコルを介して、ルーティング情報を直接交換することができます。 Azure Route Server は高可用性を使用して構成されたフル マネージド サービスです。


キーワードとして「BGP」があり、Azure Route Serverを利用する上でBGPの理解が必須になってきます。

ExpressRouteにおいても、オンプレミスとAzure VNetを一対一で接続する場合にはBGPの深い知識はなくてもなんとかなりますが、複数拠点や冗長化などを考える際にはそうはいきません。

加えて、多くのケースではAzure Route Serverそれだけでは構成としては成り立たず、BGPが利用可能な別のコンポーネント、たとえばNVAなどが必須となります。

検証用途であればUbuntu ServerなどのLinuxサーバをNVAの代替として構成することも可能ですが、設定の煩雑さやオペレーションへの慣れ、冗長構成の取りやすさなどから基本的にはNVAを利用することが多いと思われます。

Azure Route Serverによって可能となる構成例

Azure Route Serverにより初めて実現可能となった、一番典型的な利用例としてExpressRoute GatewayとVPN Gatewayの折り返しがあります。

今までできなったのか、といえばそうなのですが、Azure Route Serverがでてくるまで、Virtual WANを使わないと実現できないのがこの構成でした。

ExpressRoute and VPN Gateway with Azure Route Server

ExpressRoute GatewayとVPN Gatewayを作成し、そのうえでAzure Route Serverを構成すると、ExpressRouteで接続された拠点とVPN Gatewayで接続された拠点が折り返しで通信できるようになります。

なお、NVAはこの構成において必ずしも必要ではありません。

動作の原理として、まずExpressRouteで受け取った拠点からの経路情報をBGPにてAzure Route Serverが受け取ります。

次に、Azure Route ServerはVPN GatewayともBGPの接続があるため、VPN Gateway側にもその経路を伝搬します。

これにより、VPN Gatewayで接続されている拠点にもExpressRouteで接続されている拠点の経路情報が伝わります。

逆の動きがVPN Gatewayで接続された拠点の経路情報についても行われ、それぞれが通信可能になります。

おわりに

今回はサービスのGAからだいぶ時間がたち、構成に採用される例が少しずつ増えてきているAzure Route Serverについて、導入となる説明をしました。

docsでは他の構成もいくつか紹介がされており、Azure Route Serverによって構成の可能性や複雑性が広がっていることがわかります。

あまり複雑な構成にならないことが設計や運用の観点からは重要ですが、少し頭の片隅に入れておくと設計の幅が広がりますので、覚えておいていただければと思います。

この記事を書いた人 日本マイクロソフト 酒見

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